詩音と海と温かいもの

 俺、川瀬匠海は苦しめられていた。

 何に?

 最愛の女の子に。

 詩音ちゃんは高校生になり、俺は大学三年生になった。

 大学三年生は実習と就活でめちゃくちゃ忙しくて、詩音ちゃんに会える回数が一気に減った。

 それでも詩音ちゃんは不満も泣き言も言わず、会えた時には嬉しそうにしてくれていた。




「匠海さーん!」

「おう、おつかれ」

「お疲れさまです!」


 夏休みが始まってすぐ、詩音ちゃんを俺の実家に送るために待ち合わせをしていた。

 俺はバイトと実習と就活で、今年は実家に帰れない。

 でも、少しでも詩音ちゃんに会いたくて駅で待ち合わせたはいいけど、逆に辛かった。


 ――なんでかって!


 詩音ちゃんは高校生になって、いっきに女の子らしくなった。

 具体的に言うと体型にメリハリがついて、出るとこが出るようになったのだ。

 中学生の間は少年みたいなストンとした体型だったから、抱きしめても俺もそこまで気にならなかったけど、今はそうじゃない。

 胸はもちろん、肩とか腰周りが丸みを帯びて柔らかくなっちゃって、抱きしめるとなんかいい匂いがする。

 その状態で、


「匠海さん大好きっ」


 なんて言いながら抱きついて、喉や顎に口付けてくるわけだ。

 でも、未成年なわけで。

 高校生になったときに「キスくらいしてもいいんじゃねえかな」ってちょっと思ったけど、無理。

 こんなもちもちの美少女にキスして、それで止めるなんてできない。

 そういうわけで、詩音ちゃんにどれだけ迫られても、俺は耐え忍んでいるわけだ。