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「お会計、ありがとね白石」
「次は高野が払う番な?」
「じゃあ次がないようにしなくちゃ」
「とんでもねぇ奴だな」
あれから私と白石は仕事の話に火が付いてしまい、気づけばもう二三時が過ぎていた。
明日も仕事だというのに遅くなり過ぎてしまったことを少し後悔しながら、白石と二人でのんべぇを出たそのときだった。
「──へ!?」
のんべぇのちょうど向かい側にあるイタリアン専門の高級レストランから出てきた一組の男女。
そのうちの一人がまさかの北ヶ瀬さんだったから、私は思わずその場で口元を押さえて大きな声を発してしまった。
私の突き抜けた声に、白石と北ヶ瀬さん、それから彼の隣にいるとても綺麗な女性が一同に私の方を見る。
「き、北ヶ瀬さ──……」
「おい高野。いきなり大きな声出すなよ、びっくりすんだろ」
「あ、えっと、その、ごめん……」
突然の北ヶ瀬さんとの遭遇にどうしていいのか分からなくなってしまった私は、その場で狼狽えてしまう。
「(あれ?私ってこういう場で北ヶ瀬さんに声をかけてもいいんだっけ?)」
良いに決まっている。だって私達は友達だもの。
それなのに、どうして今も彼に何も言えないままなんだろう。
なぜ北ヶ瀬さんの顔を見ることさえできずに目を泳がせているんだろう。
「……っ」
答えは明確だった。
北ヶ瀬さんの隣に、女性がいたからだ。



