「聞かなかったことにする」
「いや、聞かなかったことにすんな。あのな、一旦よく考えてみ?」
相変わらず豪快にビールを飲み干したあと、白石は向かいに座っている私に顔を近づけて肩の上にポンと手を置いた。
「俺達、二二歳のときに出会ってもうぐす八年が来ようとしてるだろ?毎日のように顔を合わせて、会話して、お互いのことだっていろいろ知ってる。俺は会社の中でもお前のことはかなり信頼してるし、高野も俺が嫌いなわけではないだろ?一から恋愛するあの面倒なことを全部すっ飛ばして今すぐにでもカップルになれる。どうだ、最高だと思わねぇ?」
「お、おお、思うわけないでしょバカタレ!」
私の肩に乗せられたままの白石の手を勢いよく払いのけた。
そして床に転がってしまった唐揚げを拾ってティッシュに包む。もったいないことをしてしまった。
「いや、マジで一旦落ち着いて考えてみ?俺、こんなでも本命ができたら女遊びとかしねぇから」
「ダ、ダメダメ!そんなの絶対ダメ!」
何を真剣に言い出すのかと思えば、まさかあの白石から告白まがいなことをされるとは夢にも思わなかった。
ない、絶対にナシ、あり得ないと言いながらも心臓が爆音で脈を打ち始める。
白石のことは嫌いじゃない。
女たらしなところは許せないけれど、容姿も、仕事に向き合う姿勢も、人としてもどちらかと言えば好感を持っている。
けれど、異性として好きかどうかなんて今まで一度も考えたこともなかった。
「俺は高野のこと、普通に女として見てるけど」
「し、白石それ以上はストップ!私、明日から白石と一緒に働きづらくなっちゃうでしょ!?」
「俺は仕事とプライベートは完全に分けるタイプだから」
「私は違うの!どうしても引きずってしまうタイプなの!いいの!?これから始まる大型プロジェクトで、私が大ミスやらかしちゃうかもよ!?」
「ミスは気にすんな。俺が全部カバーしてやるから」
「……!?」



