「……よぉ、お疲れさん」
「あぁ、白石。おはよう〜」
午後からの商談に向けて資料の見直しをしていると、慌てた様子で隣の席にやってきたのは白石だった。
白石はすでに仕事に取り掛かっているのか、デスク周りがかなり荒れている。
「高野さ、今日夜時間ある?」
「え、今日?今日は最終の打ち合わせが一九時だから、長引かなければその後は空いてるけど?」
「久しぶりに飯、行こうぜ」
「え、なんで?」
「お前彼氏と別れたんだろ?ちょっと付き合えよ」
「……ちょっと待って。私、白石に別れたこと言ってないと思うんだけど?」
「残念だけどもう知ってるから。じゃ、二〇時にいつもの居酒屋な。予約は俺がしとくから」
「あ、ちょっと白石!勝手に決めないでよ!」
淡々とそれだけ伝えて、白石は慌てた様子で書類を手に持って会議室へ走っていく。
あんなスケコマシでも、営業一課随一の優秀社員だ。
年に一度行われる会社全体の決起祭で、白石は二年連続優秀社員賞を受賞してしまうほどに仕事ができる。
「(負けてられない。私も頑張らないと……!)」
あんなシゴデキ同期がいると、大変だけれどモチベーションだけは保たれる。
私は広げたスケジュール帳に、『二〇時 白石 ご飯』と書き足して、再び仕事に取り掛かった。



