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「──高野先輩、一生のお願いです……!」
今年も残すところ一ヶ月を切った、寒さの厳しい十二月。
肩を窄めながらいつもどおり出勤してパソコンを立ち上げた瞬間、後輩の莉里ちゃんが涙目になりながら両手を合わせて拝んできた。
「ど、どうしたの莉里ちゃん?」
「うぅ、高野先輩〜!」
話を聞けば、新しくできた彼氏とクリスマスを過ごすために有休を取りたいけれど、大口の取引先への年末の挨拶と夜の接待が重なってしまったらしい。
「もともとは高野先輩から引き継いだ会社ですし、当日私が風邪を引いたことにして、代わりに先輩が登場するっていうのはどうですか!?」
「ものすごいシナリオ準備してるじゃん」
若い子のエネルギーは恐ろしい。
莉里ちゃんは私より五つ年下の後輩で、初めて新人教育の担当になった子でもあるから、それなりに大事にしてきたつもりではあるけれど……。
「でも私も今月から白石と一緒に大型プロジェクトを動かさなきゃ、だし、クリスマス当日は商談も一件入ってて結構厳しいスケジュールなんだよね」
「そこをなんとか!こんなこと頼めるのは高野先輩しかいないんですよぉ!」
この調子だと、きっと莉里ちゃんは私が首を縦に振るまで諦めないだろう。
結局、私は押し切られる形で莉里ちゃんのお願いを引き受けてしまい、年末の自分の首を一層絞めることになった。
そうでなくても一二月はどの部署も繁忙期に入る。
年末年始の大きな連休を挟むことになるから余計に、一人あたりの仕事量はどうしても増えてしまうのだ。
最近は北ヶ瀬さんも仕事が忙しいらしく、ここ最近はまったく会えていない。
彼から届く丁寧なメッセージのやり取りだけが、今の私のささやかな癒やしとなっていた。
「はぁ。私、頑張れるかな」



