あなたに友達以上の関係は望まない(はずだった)。





 「ねぇ、和泉さん。これからも、無理に同棲や結婚する必要はないからね?」

 「……はい」

 「君が海外に出て、もしも行ってみたい場所や住んでみたいところがあればそっちに移ってみるのもいいし、無理に結婚という形を取らなくたって僕は全然構わない。これから先も、和泉さんと僕がちゃんと二人で幸せになれる形を一緒に探していこうね」




 そう言って、キュッと私の小指に力を込めた夏樹さんは、出会ったときから一つも変わらないあの優しい笑みを浮かべた。



 あぁ、だから私はこの人の隣にずっといたいと思ったんだ。

 誰かと一緒になることが面倒で、自分のライフステージが変わってしまうことが怖くて、これ以上自分が傷つかないために一生一人で生きていくと決めていたはずだった。

 それでも今、こうして彼と一緒にいることに一ミリの後悔もないのはひとえに夏樹さんだからだ。




 きっとこれからも、たくさんの不安や恐怖に出くわすことがあるだろう。

 自分一人で歩んできた人生から、これからは彼と二人で共に歩んでいくのだから、そんなの当然だ。





 だけど、それすらも愛おしいと思える気がする。




 あなたに友達以上の関係は望まない。

 頑なにそうやって心を閉ざしていた私の手を取ってくれた彼と、これから先の未来で幸せになりたいと思う。


 そして、こんな愛おしさを教えてくれた彼のことを、精一杯愛して、幸せにしてあげたいって思ったんだ──。






 「大好きです、夏樹さん」

 「僕も愛してるよ、和泉さん」







【完】