薔薇と初恋~10年間、ずっと守られていたなんて知りませんでした~



第4話「貸切の遊園地デート」


◯児童養護施設(昼)

ローテーブルが並ぶ室内。

女の子A「真白ねぇ! 早く早く」

小学1年生の女の子が折り紙を折る真白の肩を揺らす。

真白の周りには数名の女の子。

真白「順番ね、順番」

真白(今日は樹さんと一緒に私が育った児童養護施設のお手伝いに来ている)

グラウンドにはボール遊びをする男の子たち。

真白「できた! ねこちゃん」

ねこの折り紙をもらった女の子Bは喜んで先生に見せに行く。

先生《40代女性》「まぁ、可愛いねこちゃん。真白ちゃんが作ってくれたの? よかったわね」

女の子C「次は私のうさぎさん」

真白「うさぎさんね」

真白は周りにいた女の子たちに折り紙を配り、皆と一緒にうさぎを作る。

別のテーブルでは、八神が複数の女の子《5〜10歳》に囲まれていた。

女の子C「お兄ちゃん、絵本に出てくる王子様みたい」

八神「本当? 嬉しいな」

八神は話しかけてくる女の子たちの話を笑顔で聞いている。

先生「あの歳でもう八神社長がイケメンだってわかるのね」

折り紙を取りにきた真白に話しかける先生。

真白「ははは」

先生「いいの? 真白ちゃんの彼氏モテモテよ」

真白「彼氏じゃないですよ。お世話になってる社長です」


先生「ふふっ、そうね。真白ちゃんの住むアパートが火事になったって聞いたときは心配で夜も眠れなかったけれど、八神社長と仲良く過ごしているみたいでよかったわ」

真白「私は今も昔も周りの人に助けられながら生きています」

先生「誰だってそうよ」

先生は真白の肩を抱く。

女の子B「真白ねぇー! まだ折り紙見つからないの?」

女の子Bが真白のもとへ駆け寄ってくる。

真白「あったよ」

女の子B「じゃあ、行こう」

女の子Bに手を引かれてみんなのもとへ戻る真白。

その後は、一緒に昼食を食べて、施設内の掃除を手伝う。

真白と八神が帰る時間になり、施設のみんなが見送ってくれる。

女の子D「真白ねぇ、また会いに来てね」
《中学生の女の子》

真白「うん。みんな、仲良く助け合うんだよ。それからたくさん遊んで、勉強して、ご飯も食べて、いっぱい寝て⋯⋯」

女の子E「はいはい、わかってます」
《高校生の女の子》

女の子Eの言葉にみんなが笑う。

女の子C「お兄ちゃんもまた来てね」

八神「ああ、またみんなに会いに来るよ」

八神は女の子と目線が合うようにしゃがみ返事をした。

真白と八神に手を振る子供たち。

真白と八神も手を振り返した。



◯車内

八神「みんな元気いっぱいだったね」

真白「はい。久々にみんなの顔が見れてよかったです。先生から樹さんも何度か来ていたことがあるって聞いて驚きました」

八神グループは児童養護施設に寄付をしている。


八神「自分の目で直接、確認しておきたかったから」

真白(施設の環境のことかな?)


真白「一度も会わなかったって不思議ですよね」

八神「そうだね」

八神(俺が真白には会わないようにしていたから)

八神「そういえば先生から真白の夢の話を聞いたよ」

八神は話の流れを変える。

真白「え?」

八神「小学生のときに自分の夢を描く授業があって最初は遊園地の絵を描いたのに、お金持ちの絵に描き直したんだって?」

真白「先生ってば樹さんにそんな話をしたんですか。もっと他になかったのかなー」

八神「どうして遊園地の絵からお金持ちの絵に描き直したの?」

真白「遊園地の絵は行ったことがなくて、行ってみたいと思って描きました。でも、すぐに違うなと思って」

八神「⋯⋯⋯」

真白「それよりも、お金をたくさん稼いで施設のみんなとずっと楽しく過ごしたいなと思ったんですよね。先生からは本当にそれでいいのって何度も聞かれました」

真白は自嘲的な笑みをこぼす。

真白(みんなが野球をしている絵やアイドルになっている絵を描く中、私の絵だけが浮いていた)

真白の絵は笑顔の人たちの周りにお金の絵。

八神「施設のみんなのことが大好きだったんだね」

真白「はい。私の大切な家族です。そして、今の夢は悲しみの中にいる子供たちをひとりでも多く笑顔にすることです。私が救われたように」

八神「素敵な夢だね。真白ちゃんならきっと、叶えられるよ」

真白「ありがとうございます」

真白(そのためにもお金を稼がないと)

八神は真白の顔を盗み見て、何かを考える。


◯翌日・バイト先のケーキ屋(夜)

翌日、真白のバイト終了の時間に合わせて八神がお店にきた。


桃井「社長」

真白「樹さん」

桃井と真白は驚いた表情を見せる。

真白「どうしたんですか?」

八神「真白ちゃんを迎えに来たんだよ」

真白「私?」

真白は首を傾げる。

八神「真白ちゃんの夢を叶えに行こうかと思って」

真白「え?」

真白(私の夢って⋯⋯?)



◯遊園地

開演後の貸切状態の遊園地。

スタッフ「八神社長、お待ちしておりました」

スタッフは深々と頭を下げる。

八神「突然、連絡をしてすまない」

スタッフ「いえ。八神社長のためならいつでもご協力いたします」

真白と八神は中に通される。

真白「ここって⋯⋯」

八神「小学生の頃の真白ちゃんが行きたがっていた場所。昨日の今日だから近場でごめんね」

真白「どうして、私をここに連れてきてくれたんですか?」

八神「昨日、真白ちゃんの夢の話を聞いて思ったんだ。小学生の頃の真白ちゃんの夢を叶えてあげたかったなって」

真白「たったそれだけの理由で⋯⋯」

真白(この人はどこまで私を甘やかすつもりなんだろう)

八神「まずは何から乗りたい?」

光に照らされた八神の優しい笑顔。

真白「メリーゴーランド⋯⋯に、乗りたいです」

八神「行こう」

差し出された手を取る真白。


◯メリーゴーランド

馬にまたがる真白。

真白「思ったよりも高いんですね」

八神「俺は思ったよりも小さいなと思ったよ」

真白「樹さんも遊園地初めてなんですか?」

八神「うん。うちは両親が昔から仕事で忙しかったから、こういうところは来たことがないんだ」

真白「そうだったんですね。じゃあ、次は樹さんが乗りたかったものに乗りましょう!」

八神「何にしようかな」

動き出すメリーゴーランド。


前の馬に乗る真白を優しい眼差しで見つめる八神。

その後、フリーホールやコーヒーカップなど夜の遊園地を楽しんだ真白と八神。

八神は撮影した真白の写真を見返しながら笑顔を浮かべた。


出入り口に向かって歩いてる真白と八神。

真白「樹さん、今日は本当にありがとうございました! 夢のような一日でした」

八神「俺も楽しくてあっという間の時間だったよ。あ、そうだ。そういえば真白ちゃんにひとつお願いがあったんだった」

真白(樹さんが私にお願い?)

真白「なんでもやります! やらせてください!」


八神「実は2週間後にパーティーがあって、俺と一緒に出席してほしいんだ」


真白「⋯⋯へっ?」


真白(わ、私が樹さんと一緒にパーティー⁉)