「ありがと〜純恋」


私がそう言うと、「静かにしてくださ〜い」という先生の声が聞こえた。

私は崩れていた体勢を直し、教室の前に視線をやる。


「それでは次に出し物を決めていきたいと思います。これからの進行は実行委員の二人に任せますね。二人とも、前に出てきてください」


先生がそう言うと、深沢くんは座っていた椅子から腰を上げる。

それを見て、私もワンテンポ遅れで席を立った。

二人ともが黒板の前についたところで、深沢くんが口を開いた。


「じゃあ、出し物でやりたいの聞いてくから意見があるやつは挙手制な」


クラスメイトに人懐っこい笑顔を見せながら、前に立っても全く緊張なんかしていないとでも言うようにスラスラと話す。


「朝比奈は黒板書記お願い」


続いてこちらにも笑顔を振りまきながらそう言ってくる深沢くん。


「はい」


私はそう返事し、チョークを持って黒板に大きく『文化祭出し物決め』と縦書きで記す。

そして、いつ意見が出てもいいようにクラスメイトたちがいる方を見た。

中々手を挙げないクラスメイト達を見て、先生が「無難に食べ物の屋台とかどう?ベビーカステラとか、リンゴ飴とか、お祭りみたいに」と意見を出してくれる。

私はその意見を聞き、黒板に屋台と記す。
その横に矢印を書いて、ベビーカステラ、リンゴ飴とも記した。


「朝比奈もできるだけ意見出してくれ。このまま言ったら全然決まらん」


深沢くんが困ったような笑顔でそう言う。

そんな深沢くんの顔を見て、ふと記憶が蘇った。