仕方がないので、学園を乗っ取ろうと思います!

 たった一言、千晶の言葉で、室内は静かになった。


 とはいえ、2人しかいないので、当然と言えば当然かもしれない。



「……その生徒の名前は?」


「お、乙女矢鈴香(おとめやすずか)という女子生徒です……」



 あのガタイのいい武蔵が、小さく縮こまってその名を告げる。



「乙女矢鈴香……」



 千晶は顎に手を当てて、何かを考えていた。


 そして満面の笑みで顔を上げた。



「そうですか。 分かりました。 わざわざ呼び出してすみませんね。 どうぞ、帰られてください」


「は、はい! では、失礼いたします」



 武蔵は急ぎ足で理事長室を出て行った。


 そして、理事長室に残ったのは、静寂と険しい顔をした千晶だけ。


 千晶は悪天候の空を大きな窓から眺め、「乙女矢鈴香……か」と呟いた。



「……邪魔だな」



 完璧無欠として知られる如月千晶が、低い声でそう唸ったことは、誰も知らないのだった。