片思いのアリス

 昼休み、わたしは早速琴宮先生に会いに職員室にやって来た。

 琴宮先生の席の方を見ると、琴宮先生は丁度昼食を食べているところだった。
 食べているのは手作りのお弁当。曲げわっぱのお弁当箱にお米とおかずが丁寧に入れられている。
 まさか彼女作……!? わたしは背筋が凍る。

 「琴宮先生、お食事中すみませーん!」

 わたしは琴宮先生に直接聞いてみることにした。琴宮先生の彼女事情、絶対に気になる。

 「ああ、有栖さん。ごめんね、食事中で」
 「こちらこそすみません! 先生、お料理されるんですか?」

 わたしは「彼女」という単語を出さず、さりげなく聞いてみることにした。

 「お弁当は毎日自分で作るかな。節約にもなるし」
 「へー! そうなんですね!」

 ほっ。一安心。
 彼女なんていたら、コンクールどころじゃないよ。一生枕を濡らしているところだった。

 せっかくお弁当の話題になったし、好きな食べ物、聞いちゃおうかな……?

 「琴宮先生、好きな食べ物は何ですか?」
 「僕の好きな食べ物? そうだなー、ラーメンかな」
 「ラーメン!」

 答えてくれた!
 そしてちょっと意外。もっとおしゃれなものが好きかと思ってた。同じ麺類でも、パスタとか。
 大学生ってそんな感じなのかな。

 ここでわたしの妄想センサーは早速作動する。
 夜、琴宮先生と一緒に先生おすすめのラーメン屋さんに行くの。そこでおすすめのトッピングを教えてもらって、それで……。

 「有栖さんは好きな食べ物、何?」

 琴宮先生がわたしを見上げて言った。

 今度は琴宮先生がわたしの好きな食べ物に興味を持ってくれた!
 それだけで気分が上がってしまう。

 「わたしはだし巻き卵です!」
 「えーっ、渋っ!」
 「よく言われます」
 「何でだし巻き卵が好きなの?」

 「渋っ!」なんてリアクションする琴宮先生、初めて見た。
 なんだか距離が縮められているようで、嬉しい気持ちになる。
 しかも、好きな理由まで聞いてくれた。

 「調理実習でうまく作れたからです。家でも作ったら、家族にも評判だったんですよ」
 「あー、なるほどね」

 わたしは琴宮先生にもだし巻き卵を作ってあげる光景を妄想した。
 琴宮先生も調理実習の班の子や家族みたいに、「おいしい」って目が無くなるような笑顔で笑ってくれるの。

 ……なーんて。

 今日は琴宮先生とすごく仲良くなれた、気がする。

 「それで、ごめんね。今日も課題の質問だった?」
 「いえ、急いでないので大丈夫です。お食事中失礼しました!」

 職員室に長く居座り過ぎない。これも先生から好かれるためのポイント。……たぶん。
 わたしは「ありがとうございましたー!」とだけ言って職員室を出た。

 琴宮先生は不思議そうに会釈をしてくれた。