片思いのアリス

 時は過ぎて、12月。
 
 あの佐紀との電話から、わたしはまたいつものように水曜日には琴宮先生のところに通うようになった。

 この前女の人について聞いたことは、琴宮先生は何も触れなかった。
 だからわたしも何も言わなかった。

 そのかわり、色んなことを話した。
 12月はもう寒いですね、とか季節のことから、最近の部活動のことまで。

 吹奏楽部は3月に定期演奏会があって、そこで中3の先輩は新緑学園高等部の吹奏楽部に上がるから、これが中等部としては最後の舞台なんだ。
 
 だから中3の先輩はコンクール前みたいにピリピリしてる。
 高校生になる前に、最高の舞台にしたいからって。

 わたしも中3の先輩の足を引っ張らないように、頑張りたいと思う。

 今日は水曜日。わたしはいつものように宿題のプリントを持って、職員室を訪れた。

 「琴宮先生、今よろしいですか?」
 「ああ、有栖さん。今日は何がわからないの?」

 いつもどおり。
 あんなことなんて、なかったみたいに。

 「ここの昨日の理科で習ったところがよくわからなくて……」
 「ふむふむ、よく見せて」

 琴宮先生とわたしの顔が近づく。
 
 それだけでドキッとする。

 やっぱりわたし、琴宮先生のことが好きなんだ。

 もう12月。クリスマスまで、あと少し。
 わたしは琴宮先生に告白する。
 
 思いを伝えられれば、きっとわたしもすっきりすると思うから。
 ――それに、もしかしたら、本当に付き合えるかもしれないから。