次の水曜日。
わたしはいつものように、職員室に行くことにした。
もうそれが日課になっていたから。
それに、日曜日に見た光景を信じたくなくて。
「お、来たね。有栖さん。今日は何がわからないの?」
琴宮先生はいつものようにわたしに笑顔を見せる。
「あ、はい……」
だけどわたしはぎこちない返事しかできない。
それを見た琴宮先生は、わたしの様子に気がついたようで、わたしの顔をじっと見た。
「どうしたの? なんかいつもと様子違うね。体調悪い?」
「え?」
わたしは目を丸くした。
わたしの異変に気がついてくれたのはちょっと嬉しいけど、それよりも日曜日のショックの方が勝ってしまう。
どうしよう、言っちゃおうかな。
いや、でも……。
わたしは迷って黙り込んでしまった。
「有栖さん? ほんとに大丈夫?」
「えっと、あの……」
――いいや、聞いちゃえ!
「わたし、この前の日曜日に、琴宮先生が女の人と歩いているのを見たんです。あの人って彼女ですか?」
「え?」
今度は琴宮先生が目を丸くした。
そしてばつが悪そうに目線をそらして、こう言った。
「そっか、見られてたんだ……」
わたしは黙って琴宮先生を見ていた。
「……あの人は、高校時代に付き合ってた人だよ。……あんまり、学校でこんな話をするのはふさわしくないよ。もうこの話は終わりにしよう」
琴宮先生は相変わらずばつが悪そうにしながら答えた。
たしかに、生徒が先生に個人的な恋愛のことを聞くのはふさわしくないかもしれない。
だけど気になる。
だって、わたしは琴宮先生のことが好きだから。
「また付き合うことはあるんですか?」
わたしは話題を変えたそうにしている琴宮先生を無視して聞いた。
「そういうことを学校で話すのは、ちょっと違うよ。有栖さん、勉強のことを聞きに来たんだよね?」
「どうしても教えてもらえないんですか?」
「……うん。どうしても」
わたしはがっくりして肩を落とした。
そしてうつむいたまま答えた。
「わかりました。……今日はそれだけが気になって職員室に来たんです。では、失礼します」
「有栖さん……。ごめんね」
わたしは職員室を出た。
職員室前の廊下で、ぼーっとして立っていた。
わたしは琴宮先生が好き。
一緒に琴宮先生が好きなラーメンを食べたい。
アンサンブルがしたい。
佐紀と食べたあのクレープを、琴宮先生とも食べたい。
――もっと、琴宮先生と話したい。
5月のあの日、音楽室でバイオリンを弾いている琴宮先生に会って、アドバイスをもらったこと。
オーディションの合格を一緒に喜んだこと。
夏期講習をしてもらったこと。
コンクールの結果をなぐさめてくれたこと。
一緒に文化祭を周ったこと。
――そして、一緒にアンサンブルをしたこと。
わたし、琴宮先生ともっと近づけてると思ってた。
でも、違ったんだ。
わたしと琴宮先生はあくまで先生と生徒で、大学生と中学生なんだ。
わたしは涙がこぼれそうになった。
――わたしが、思い上がってたんだ。
わたしはいつものように、職員室に行くことにした。
もうそれが日課になっていたから。
それに、日曜日に見た光景を信じたくなくて。
「お、来たね。有栖さん。今日は何がわからないの?」
琴宮先生はいつものようにわたしに笑顔を見せる。
「あ、はい……」
だけどわたしはぎこちない返事しかできない。
それを見た琴宮先生は、わたしの様子に気がついたようで、わたしの顔をじっと見た。
「どうしたの? なんかいつもと様子違うね。体調悪い?」
「え?」
わたしは目を丸くした。
わたしの異変に気がついてくれたのはちょっと嬉しいけど、それよりも日曜日のショックの方が勝ってしまう。
どうしよう、言っちゃおうかな。
いや、でも……。
わたしは迷って黙り込んでしまった。
「有栖さん? ほんとに大丈夫?」
「えっと、あの……」
――いいや、聞いちゃえ!
「わたし、この前の日曜日に、琴宮先生が女の人と歩いているのを見たんです。あの人って彼女ですか?」
「え?」
今度は琴宮先生が目を丸くした。
そしてばつが悪そうに目線をそらして、こう言った。
「そっか、見られてたんだ……」
わたしは黙って琴宮先生を見ていた。
「……あの人は、高校時代に付き合ってた人だよ。……あんまり、学校でこんな話をするのはふさわしくないよ。もうこの話は終わりにしよう」
琴宮先生は相変わらずばつが悪そうにしながら答えた。
たしかに、生徒が先生に個人的な恋愛のことを聞くのはふさわしくないかもしれない。
だけど気になる。
だって、わたしは琴宮先生のことが好きだから。
「また付き合うことはあるんですか?」
わたしは話題を変えたそうにしている琴宮先生を無視して聞いた。
「そういうことを学校で話すのは、ちょっと違うよ。有栖さん、勉強のことを聞きに来たんだよね?」
「どうしても教えてもらえないんですか?」
「……うん。どうしても」
わたしはがっくりして肩を落とした。
そしてうつむいたまま答えた。
「わかりました。……今日はそれだけが気になって職員室に来たんです。では、失礼します」
「有栖さん……。ごめんね」
わたしは職員室を出た。
職員室前の廊下で、ぼーっとして立っていた。
わたしは琴宮先生が好き。
一緒に琴宮先生が好きなラーメンを食べたい。
アンサンブルがしたい。
佐紀と食べたあのクレープを、琴宮先生とも食べたい。
――もっと、琴宮先生と話したい。
5月のあの日、音楽室でバイオリンを弾いている琴宮先生に会って、アドバイスをもらったこと。
オーディションの合格を一緒に喜んだこと。
夏期講習をしてもらったこと。
コンクールの結果をなぐさめてくれたこと。
一緒に文化祭を周ったこと。
――そして、一緒にアンサンブルをしたこと。
わたし、琴宮先生ともっと近づけてると思ってた。
でも、違ったんだ。
わたしと琴宮先生はあくまで先生と生徒で、大学生と中学生なんだ。
わたしは涙がこぼれそうになった。
――わたしが、思い上がってたんだ。


