11月も少し過ぎたころ。
わたしと佐紀は日曜日に繁華街へ遊びに来ていた。
お目当ては、今流行りのマスコット!
ウサギの姿をしていて、ちょっとブサイクなのがツボ。
カバンにつけるのが流行ってるんだ。だからその専門店にやって来たの。
「あ、売ってる!」
わたしは虹みたいに棚に並べられた何色ものマスコットを見て、声を上げた。
「何色にする?」
佐紀も嬉しそう。
「わたし、ピンクかな!」
「あはは、ゆいらしいね」
わたしはピンク色のウサギを手に取った。
うーん、ちょっとブサイク。でもそれがいい。
「わたしは青にしようかな」
「お、佐紀も青って感じ」
佐紀はトランペットのケースも青だしね。
わたしたちは店内をしばらく物色したあと、会計を済ませて、店の外に出た。
「まだお昼過ぎだね。どっかでお昼食べる?」
佐紀がスマホの時計を見て言った。
「あ、わたしあそこ行きたい! フランス風のクレープ食べれるとこ!」
「お、いいね」
最近テレビで見たんだよね。
日本のクレープはチョコやバナナを入れて丸めるけど、フランス風のクレープは折られてお皿で出てくるんだ。
わたしたちは早速スマホのマップでお店の場所を調べ、そこへ向かった。
幸いランチの時間のピークは過ぎたみたいで、あまり並ばずにテラス席へ案内された。
「テラス席でフランス風のクレープなんて、まるでパリに来たみたい!」
「はいはい、わたしはあなたのお花畑具合がうらやましいよ」
……自分でも自覚してる。
最近のわたし、ほんとに頭の中がお花畑。
だって、アンサンブルコンサートがあんなに大成功したんだもん。
3月には定期演奏会っていう1大イベントが待ってるけど、もう少し余韻に浸っててもいいよね?
「お待たせしました。当店特製クレープです」
ウエイターさんが、2つお皿を運んできた。
のっているのは、きれいに折りたたまれたクレープ生地に、お砂糖とバター。
すごくおいしそう!
佐紀は運ばれてくるなりスマホで写真を撮っている。
SNSに載せるのかな。意外と佐紀って、SNSとか好きなんだよね。
くだらない、とか言いそうなのに。
「いただきまーす!」
「いただきます」
わたしはナイフで生地を少し切って、バターも少しのせて、思い切りほおばった。
……もちもちでおいしい。
いつも食べてるクレープとは全然違う。
「おいしいね!」
「うん、おいしい。それに意外とお腹にたまるね」
「あ、わたしもそれ思った!」
わたしたちは相変わらず琴宮先生の話をしたり、吹奏楽部内のカップルの話をしたりしながらクレープをあっという間にたいらげてしまった。
「ふー! ごちそうさまでした!」
「ごちそうさまでした」
今日は最高の休日。
流行りのマスコットも買えたし、こんなにおいしいクレープも食べれた。
大満足の日曜日って感じ。
――そのとき。
「ねえ、あれ」
佐紀が突然声を上げた。
そして横断歩道で信号待ちをしている人たちの集まりを指さす。
「あれ、琴宮先生じゃない?」
「え!?」
わたしは指さされた男の人を凝視する。
普段はスーツを着ているけど、今日は革のジャケットを羽織っていて、少しわかりづらい……だけどあれは琴宮先生に間違いない。
「ねえ、隣にいるの……ふがっ!?」
佐紀が言いかけて、わたしは思わず佐紀の口を軽くふさいでしまった。
その先が聞きたくなくて。
だけど佐紀は言った。
「彼女じゃない?」
「そ、そんなはずない!」
わたしは琴宮先生の隣にいる女の人を観察した。
黒いファーのジャケットを羽織った、大人っぽい感じの女の人。
女の人はふと琴宮先生の方を見たので、横顔だけ見えた。すごく美人。横顔だけでわかる。
なんだか自分がすごく子供っぽく感じた。
そこで、信号は青に変わってしまった。
琴宮先生と女の人は、大人数の人の群れにまぎれて消えてしまった。
「琴宮先生、彼女いないって言ってたもん!」
わたしは大きな声で言った。
「そんな大きな声出さないでよ……」
「あ、ごめん……」
わたし、動転してた。
まさか琴宮先生と女の人が一緒にいるところを見かけるとは思わなかったから。
「わたしたち生徒だし、嘘ついたのかもよ? それか、新しくできたとか」
「そ、そんな……」
最高の休日が、一気に崩れ去ってしまった。
琴宮先生に、彼女がいるかもしれないなんて……。
動揺がおさまらないわたしを見て、佐紀は言った。
「とりあえずお店出よ。今日はもう帰ろ」
「ごめん、ありがとう……」
わたしたちはテラス席を後にすると、お会計を済ませてお店を出た。
ああ、テラス席じゃなければ、こんな現実、見ずに済んだのに……。
いや、現実を知っておいて正解だったのかな? わかんないや……。
わたしはこれから、どうすれば良いんだろう……。
わたしと佐紀は日曜日に繁華街へ遊びに来ていた。
お目当ては、今流行りのマスコット!
ウサギの姿をしていて、ちょっとブサイクなのがツボ。
カバンにつけるのが流行ってるんだ。だからその専門店にやって来たの。
「あ、売ってる!」
わたしは虹みたいに棚に並べられた何色ものマスコットを見て、声を上げた。
「何色にする?」
佐紀も嬉しそう。
「わたし、ピンクかな!」
「あはは、ゆいらしいね」
わたしはピンク色のウサギを手に取った。
うーん、ちょっとブサイク。でもそれがいい。
「わたしは青にしようかな」
「お、佐紀も青って感じ」
佐紀はトランペットのケースも青だしね。
わたしたちは店内をしばらく物色したあと、会計を済ませて、店の外に出た。
「まだお昼過ぎだね。どっかでお昼食べる?」
佐紀がスマホの時計を見て言った。
「あ、わたしあそこ行きたい! フランス風のクレープ食べれるとこ!」
「お、いいね」
最近テレビで見たんだよね。
日本のクレープはチョコやバナナを入れて丸めるけど、フランス風のクレープは折られてお皿で出てくるんだ。
わたしたちは早速スマホのマップでお店の場所を調べ、そこへ向かった。
幸いランチの時間のピークは過ぎたみたいで、あまり並ばずにテラス席へ案内された。
「テラス席でフランス風のクレープなんて、まるでパリに来たみたい!」
「はいはい、わたしはあなたのお花畑具合がうらやましいよ」
……自分でも自覚してる。
最近のわたし、ほんとに頭の中がお花畑。
だって、アンサンブルコンサートがあんなに大成功したんだもん。
3月には定期演奏会っていう1大イベントが待ってるけど、もう少し余韻に浸っててもいいよね?
「お待たせしました。当店特製クレープです」
ウエイターさんが、2つお皿を運んできた。
のっているのは、きれいに折りたたまれたクレープ生地に、お砂糖とバター。
すごくおいしそう!
佐紀は運ばれてくるなりスマホで写真を撮っている。
SNSに載せるのかな。意外と佐紀って、SNSとか好きなんだよね。
くだらない、とか言いそうなのに。
「いただきまーす!」
「いただきます」
わたしはナイフで生地を少し切って、バターも少しのせて、思い切りほおばった。
……もちもちでおいしい。
いつも食べてるクレープとは全然違う。
「おいしいね!」
「うん、おいしい。それに意外とお腹にたまるね」
「あ、わたしもそれ思った!」
わたしたちは相変わらず琴宮先生の話をしたり、吹奏楽部内のカップルの話をしたりしながらクレープをあっという間にたいらげてしまった。
「ふー! ごちそうさまでした!」
「ごちそうさまでした」
今日は最高の休日。
流行りのマスコットも買えたし、こんなにおいしいクレープも食べれた。
大満足の日曜日って感じ。
――そのとき。
「ねえ、あれ」
佐紀が突然声を上げた。
そして横断歩道で信号待ちをしている人たちの集まりを指さす。
「あれ、琴宮先生じゃない?」
「え!?」
わたしは指さされた男の人を凝視する。
普段はスーツを着ているけど、今日は革のジャケットを羽織っていて、少しわかりづらい……だけどあれは琴宮先生に間違いない。
「ねえ、隣にいるの……ふがっ!?」
佐紀が言いかけて、わたしは思わず佐紀の口を軽くふさいでしまった。
その先が聞きたくなくて。
だけど佐紀は言った。
「彼女じゃない?」
「そ、そんなはずない!」
わたしは琴宮先生の隣にいる女の人を観察した。
黒いファーのジャケットを羽織った、大人っぽい感じの女の人。
女の人はふと琴宮先生の方を見たので、横顔だけ見えた。すごく美人。横顔だけでわかる。
なんだか自分がすごく子供っぽく感じた。
そこで、信号は青に変わってしまった。
琴宮先生と女の人は、大人数の人の群れにまぎれて消えてしまった。
「琴宮先生、彼女いないって言ってたもん!」
わたしは大きな声で言った。
「そんな大きな声出さないでよ……」
「あ、ごめん……」
わたし、動転してた。
まさか琴宮先生と女の人が一緒にいるところを見かけるとは思わなかったから。
「わたしたち生徒だし、嘘ついたのかもよ? それか、新しくできたとか」
「そ、そんな……」
最高の休日が、一気に崩れ去ってしまった。
琴宮先生に、彼女がいるかもしれないなんて……。
動揺がおさまらないわたしを見て、佐紀は言った。
「とりあえずお店出よ。今日はもう帰ろ」
「ごめん、ありがとう……」
わたしたちはテラス席を後にすると、お会計を済ませてお店を出た。
ああ、テラス席じゃなければ、こんな現実、見ずに済んだのに……。
いや、現実を知っておいて正解だったのかな? わかんないや……。
わたしはこれから、どうすれば良いんだろう……。


