片思いのアリス


 わたしは職員室に来ていた。

 ……琴宮(ことみや)先生、いるかな?

 琴宮先生。琴宮(ひかる)先生。
 新緑学園のOBの大学1年生で、水曜日だけバイトでわたしたちに勉強を教えに来るんだ。

 ……あ、いた!

 わたしは心の中で声を上げた。
 すぐに琴宮先生に駆け寄っていく。

 「琴宮先生、こんにちは!」

 わたしは元気に挨拶する。

 「有栖さん、こんにちは。今日もわからないところがあるの?」
 「はい! ここの方程式がわからないんですけど……」

 琴宮先生は振り向いてわたしに優しい笑顔を向けた。
 ううっ、まぶしい……!

 わたしは琴宮先生が好きなんだ。それも完全な一目惚れ。
 4月の放課後、自習室で数学の問題を解くのに悩んでたら声をかけられて、その佇まいに、話し方に、そしてその顔にすっかり一目惚れしてしまったの。

 琴宮先生はすっきりと通った鼻筋と、笑うと無くなってしまいそうな少し細い目が特徴的。そして口元には小さなほくろがある。

 わたしはいつも勉強でわからないところを聞くことを口実として、琴宮先生に会いに職員室へ行く。

 琴宮先生はわたしのことを、きっと勉強に熱心な生徒としか思っていないだろうな……。

 でも、いつか恋が実ってほしい。

 この恋を進展させるには、どうしたら良いのかな?
 そしてもしこの恋が進展して、先生とデートができたら?
 どこに行くだろう? 水族館? 映画館?

 「有栖さん、わかった?」
 「あ、わ、わかりました!」

 自分で言うのもなんだけど、わたしは妄想癖がある。
 琴宮先生のことが好きになってから、頭の中は大忙し。

 もう、わたしには吹奏楽のコンクールもあるのに…。