片思いのアリス

 「ここ、入ってみませんか? 縁日」
 「お、いいね」

 わたしたちはまず、佐紀が行きたがっていた1年3組の縁日に行くことにした。
 
 教室の中に入ると、色んな手作りの屋台が並んでいる。
 輪投げ、射的、スーパーボールすくい……。

 輪投げや射的は、一定のスコアを獲るとお菓子がもらえる仕組みになっているみたい。

 「よーし、お菓子ゲットしちゃおうかな!」

 琴宮先生は右腕をぐるぐる回しながら言った。
 琴宮先生もはしゃいだりするんだ。かわいい……!

 わたしたちが挑戦したのは射的。
 割り箸鉄砲で的に当てられたら、お菓子ゲット。

 2人で列に並んで順番を待っていると、まるでデートみたい。
 ……なんて、考えすぎ?

 「次の方……あ、琴宮先生! どうぞ!」

 案内係をしていた女の子が、琴宮先生を見た途端嬉しそうに笑顔になった。

 そうなんだよね……琴宮先生、女子に結構人気あるの。
 夏期講習でも、明らかに琴宮先生目当ての子、居たし。

 わたしは思わずじとーっとした目でその光景を見てしまった。……ばれてないといいな。

 琴宮先生の射的の腕は抜群だった。
 次々に的に当てていく。

 琴宮先生、勉強やバイオリンだけじゃなくて、射的までできちゃうなんて!
 わたしは思わず手を組んで、その光景を見つめていた。

 そして琴宮先生の手にはたくさんのお菓子。
 琴宮先生ははしゃいでいたものの、いざたくさんお菓子を貰えると困ったように笑っていた。

 ……あ。わたしはというと。
 全然的に当たらず、参加賞のんまい棒一本だけ。
 まあ、そんなもんだよね。

 「琴宮先生、すごいですね! お菓子、こんなにたくさん!」
 「ちょっとはりきりすぎちゃったかな。ほら、1個あげる」
 「やったあ! ありがとうございます!」

 琴宮先生からお菓子を貰えるなんて、嬉しすぎる。
 わたしは大事に大事にそのお菓子を係の子に貰ったビニール袋に入れた。

 「有栖さん、コンサートで疲れたでしょ。喫茶店でも入ってみない?」

 き、喫茶店!?
 それはもう、デートだよね!?

 「つ、疲れてます! 行きましょう!」

 わたしはまたたぶん顔を真っ赤にしながら返事をして、1年5組がやっている喫茶店に向かった。