片思いのアリス



 次の水曜日、また琴宮先生の夏期講習を受けた。
 今日が夏休み最後の講習。講習が終わってさみしい気持ちと、佐紀が心配な気持ちでわたしは感情がぐちゃぐちゃになっていた。

 相変わらず佐紀の顔は暗い。

 琴宮先生は今日もかっこよかったけど、それより佐紀のことの方が心配だよ。
 だって佐紀は、わたしの親友だもん。

 夏期講習が終わって、ほとんどの生徒が帰ったあと、琴宮先生がわたしたちの方へやって来た。

 「コンクール、どうだった?」

 げ。
 やっぱり、その話題だよね……。

 「銀賞でした……」

 わたしはなるべく佐紀が話さなくて良いように、すぐに答えた。

 「そっか。それは悔しかったね」

 琴宮先生は優しく微笑んだ。

 「でも、反省は次に活かせるよ。また来年、頑張ろう」

 そう言って、琴宮先生は教室を出て行った。
 教室にはわたしと佐紀だけになった。

 「その『反省』が、わかんないのに!」

 琴宮先生がいなくなったとたん、佐紀が空間を切り裂くように叫んだ。

 「佐紀……」

 わたしは、ずっとくやしくて、暗い顔をしている佐紀に何を言えば良いのか、考えていた。

 本当にそうだよね。
 なんで、金賞獲れなかったんだろう……。

 わたしは考え続ける。
 何か。何か佐紀に言えることはないか。

 ……そうだ。

 わたしたちには、まだ時間がある。
 まだ『次』がある。

 「……佐紀。琴宮先生、言ってたよね。『反省は次に活かせるよ』って」
 「だから、その『反省』が……!」

 佐紀はまるでわたしに噛みつくように言った。

 「そっちじゃなくて。わたしたちには、まだ『次』があるんだよ。だから、『次』までにゆっくり見つけよう。何がダメだったのか」

 佐紀はハッとした顔をした。

 「……わたしたちには、『次』がある……」
 「そう。それまでに、たくさん一緒に練習して、見つけようよ。……3年生の先輩には、申し訳ないけど」

 佐紀はそのとき、久しぶりに少し笑った。

 「まさかゆいに、吹奏楽のアドバイスをもらっちゃうなんてね」
 「わたしもまさか、佐紀にアドバイスしちゃうなんて」

 わたしたちは久しぶりに笑いあった。

 ……こうして、くやしさが残る結果だったけど、わたしたちの夏休みは終わった。