片思いのアリス

 翌日。
 
 わたしたちは、コンクールの会場のホールの控室で音出しをしていた。

 よし、高音、前よりも綺麗に出てる。
 連符もインテンポで吹けてる。
 あの美しいメロディーのところも、わたしにしては色っぽく吹けてる。

 この約5ヶ月、わたしなりに、頑張った。
 わたしの中での全力、きっと出せる。

 「次、新緑学園中等部吹奏楽部、舞台袖に向かってくださーい!」

 案内の人の声が控室に響いた。

 「はーい!」

 わたしたちは返事をする。

 「ねえ、最後にみんなで円陣組もうよ!」

 3年生の先輩が言った。

 「いいね!」

 他の3年生の先輩も賛同する。

 わたしたちは時間もないので、すぐに円陣を組んだ。

 部長の先輩が声を上げる。

 「新緑学園中等部吹奏楽部、金賞獲るぞー!」
 「おー!」

 わたしたちは控室を出て行く。

 よし、頑張るぞ、本番!

 
 
 「次は、私立新緑学園中等部吹奏楽部の演奏です」
 
 コンクールで演奏した曲は7分くらいの曲なんだけど、いざ本番演奏してみると、7分どころか1分くらいに感じた。
 
 ホールで演奏すると、普段音楽室で演奏するのとは音の響きが全然違う。
 わたしはその違いにびっくりした。

 わたしが課題にしていた部分は、オールクリア!
 わたし、今日が一番うまく吹けた気がする!

 それに、佐紀ほどは周りを俯瞰して見れてないけど、演奏全体もうまくまとまってた気がする。
 
 本当に、金賞獲れるんじゃない!?

 演奏が終わると、すぐにわたしたちは舞台袖にはけていく。

 部員のみんなの顔を見ると、やりきったような顔をしている人もいれば、まだ緊張しているような顔をしている人もいる。

 他の学校の生徒もいるので、すぐに控室に戻る。
 控室に戻ると、丁度近くに佐紀がいたので、話しかけた。

 「佐紀、お疲れ様!」
 
 ……あれ?
 てっきり佐紀もやりきった顔をしていると思ったのに、佐紀はうかない顔をしている。

 「うん……」

 どうしたんだろう。

 わたしが聞く限りでは、トランペットも問題なかったのに。
 って、わたしはまだ楽器初めて5ヶ月しか経ってないんだけど。

 「どうしたの?」
 「……いや、なんでもない。お疲れ様。片付けしよ」
 「あ、うん……」

 もしかして、演奏、うまくいってなかったのかな。
 わたしはだんだん自信がなくなってくる。

 わたしは不安な気持ちを抱えながら、クラリネットを片付け始めた。

 「ゆいちゃん、すごく良かったよ」

 楽器を片付け終わった2年生の先輩が話しかけてくれた。

 「ありがとうございます!」
 「金賞、獲れるといいね」
 「はい!」

 ほら、やっぱり。
 佐紀って心配性なところあるから。
 
 先輩もこう言ってるし、やっぱり金賞獲れるよ。

 私はそう信じて、楽器をしまった。