片思いのアリス

 そしてしばらく経って、オーディションの結果発表の時間になった。

 パートごとに合格者を発表していく流れみたい。
 
 「クラリネットパートの合格者を発表します」

 わたしはクラリネットを祈るように握りしめる。

 他の1年生もそれは同じ。

 「クラリネットパートは、有栖ゆいさん。1名です」

 その瞬間、わたしはほっとして、クラリネットを落としそうになった。
 あわてて両手に力を入れなおす。

 他の1年生が、複雑そうな顔で拍手してくれる。
 みんな悔しいだろうな。それでも拍手してくれるんだ。

 わたしは頭を小さく下げた。

 「トランペットパートは、神谷佐紀さん。1名です」

 もちろん佐紀も合格。

 これは当たり前過ぎて、他の1年生も「そうだろうな」という顔をしてる。

 佐紀も頭を下げた。



 部活が終わり、わたしは職員室に来ていた。

 もちろんオーディションの結果を琴宮先生に報告するために。

 「琴宮先生!」

 わたしの様子ですぐに察したのか、琴宮先生は席を立って笑顔で駆け寄ってきた。

 「今日、オーディションだったんだね?」
 「そうなんです! 合格でした!」
 「おめでとう!」

 琴宮先生は満面の笑みでわたしを祝福した。あの、目が無くなる笑顔。
 オーディションに受かったあとに見るこの笑顔、ご褒美すぎる。

 「琴宮先生のアドバイスのおかげです! 本当にありがとうございました!」
 「それはアドバイスを実践できた有栖さんの力だよ。本当によく頑張ったね」

 そんな風に褒められて、わたしは舞い上がってそのまま空を飛んでしまいそう。

 よーし、このまま、琴宮先生との恋も、コンクールも、頑張るぞ!