片思いのアリス

 そしてあっという間に1週間が経って、オーディション当日になった。しかも今日は水曜日。

 オーディションは、会場となった教室で1人ずつコンクールの曲を吹いていく。

 個人の感情が入ってしまうといけないので、審査する先輩と1年生の間にはカーテンがひかれていた。

 わたしは心臓をばくばくさせながら、廊下で自分の番を待っていた。
 
 みんなの演奏を何度も聞く。うまく吹けている子もいれば、まだ仕上がっていない子もいる。

 そして遂にわたしの番になった。

 「次の1年生、どうぞ」

 声で誰かわかるといけないので、返事はしない。

 わたしは椅子に浅く腰かけて、床をしっかり踏んで、ゆっくり息を吸う。

 落ち着け、わたし。きっとわたしならできる。
 
 わたしは曲を吹き始めた。

 まずはあのゆったりした美しいメロディーのところ。
 練習のおかげか、わたしにしては雰囲気のある、艶めかしい感じの音で吹けたと思う。

 そしてしばらく吹いていくと、次は連符。
 少し転んで…つまりテンポが崩れたりしてしまったけれど、わたしの中ではうまくいったほう。

 そのあともしばらく演奏は続いた。

 「はい、ありがとうございました」

 演奏が終わった。

 わたしは無言でオーディション会場の教室を出る。

 手ごたえとしては、今のわたしの実力を出し切れたような気がする。
 これでオーディションに落ちてしまっても、それはわたしの実力不足だと、言い切れる。

 そんな晴れやかな気持ちだった。

 「ゆい、どうだった?」

 音楽室に戻ると、早速佐紀に声をかけられた。

 「実力、出し切れたと思う」

 わたしは答えた。おそらくやり切ったぞ、という顔をしていると思う。

 「良かった! それじゃあ絶対受かるよ!」

 珍しく佐紀はテンション高く私の肩を叩いた。

 「最近のゆい、すごい良い感じだったもん。実力出せたなら、絶対受かるよ」

 佐紀は自信たっぷりの笑みで頷いて言った。