天下無双なヴァンパイアは番を探し続ける

ここは、ヴァンパイヤと人間が共存する世界。
ヴァンパイア。それは、非常に優秀で、見た目も人より美しい……と聞いたことがある。実際、有名な大きな会社は、ほとんどヴァンパイアたちが作ったと言っても過言(かごん)ではない。

そのヴァンパイアには番というものがある。ヴァンパイアは誰かれ構わず吸血するのではなく、〈番〉と呼ばれる相手を見つけて契約し、その人の血だけをもらう。
番とは、ヴァンパイアに愛される人を意味し、それに選ばれた者は、大事にされることで、人間はそれになりたいと一度は思う……らしい。まあ、生活に困らないとか、権力を目当てに、と言われないこともない。

ただ、人間の人口と比べた時、とっても少ないため、会うことはなかなかないのだが──
ないはずなのだが……

今日、白城沙音(しらしろさおん)は、元々ヴァンパイアのために作られた学校──影牙学園に入学しようとしていた。

去年まではヴァンパイア専用の進学校だと有名だったこの学校は、人間より圧倒的に優秀で、数少ないヴァンパイアたちが集う。
そして、そんな学校が今年から人間にも入学できるようになった。有名な進学校と珍しいヴァンパイアがいるせいなのか、今年はこの学校を受験する者が後を経たなかった。

私は……と言うと、何故か勝手に応募されていて、それでやらないのも申し訳なく、受験を受けた。
無事合格したところまではよかった。……それが、なぜ合格を取り消すことはできないとなってしまったのだろうか。

普通じゃないことは分かっていた。……進学校という事もあるのだろう。優秀な人材を逃さない為に、合格した人は取り消すことができないと言われてしまった。そしてそのまま、この学校に通うことになったのだ。

(……本音を言えば、平凡な所で通いたかった……)

こんなすごいところで、私はやっていける自信がない。
それに、この影牙学園の頂点に立つのは、牙族最強の存在──神牙夜翔だ。

「そいつに関わらないのが吉」

と一緒に入学してきた人が親切に教えてくれた。

生徒代表挨拶が始まる。みんなは、ステージに現れた神牙夜翔……さん? にうっとりするように見ていた。
その視線を神牙さんは全く気にすることなく、話し出した。

え?

一瞬、神牙さんと目が合ったような気がした。
ドクン、と心臓が多く揺れる感覚に陥って、懐かしいような……変な気分になる。

いやいや。そんなことはないでしょ。初対面で、しかもヴァンパイア。
私が関わったはずがないと、すぐに否定して頭の中から追い出した。

「この影牙学園に合格し、入学して来た皆さんを私たち生徒一同は心よりお祝い申し上げます」

言っている言葉はいい言葉だった。
しかし、神牙さんはとっても棒読みだった。それでも、その言葉からは威圧感がすごく、誰も何も言えずにいた。
……ううん。言えないように感じる。

神牙さんは不機嫌さを丸出しにして、定型的の言葉を話す。まるで、無理矢理押しつけられた仕事をこなすように。

ステージの下では、司会の人がオロオロしている。

……とんでもない学校に入ったのでは?…
と初日で思い始めていた私は、ちょっと学校生活が心配になってしまったのだった。