辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る

翌日、
マリナが食糧庫の整理をしていると、
そっとファティマが扉を閉めて入ってきた。

「……マリナ、少し相談してもいいかしら?」

「えっ!?相談!?もちろんですとも!私でよければ」

ファティマは右手の指輪をくるくると回しながら、
恥ずかしそうに打ち明ける。
「その……デクランがね、とっても優しくて。
 いや、優しすぎて。私……どうしたらいいのかわからなくなるの。」

マリナは固まったあと、
目をキラッキラに輝かせて前のめりになる。
「き、来たぁぁぁぁ!!恋の悩みですね!!」

(隣の船室のカーティスが「うるさいぞ」とでもいうように咳払いする)

マリナは興奮しつつ、声を潜めて言う。
「ファティマ様、それはもう間違いなく恋です!!恋ッ!!」

「……これが恋?そう。でも私は間違いなくデクランに惹かれているのだけど……」

「はい恋ですッ!!
 一緒にいたいと思ってしまうやつです!!
 ふと目で追っちゃうやつです!!
 心臓がどきっどきしちゃうやつです!!」

ファティマは顔を覆う。
「ぜ、全部当てはまるわ……!」

「ほら来た!!」

「で、でも……私、まだ……“妻”で……。夫のことは全然愛していないわ。でも夫がいながら別の男性に心が揺れるのは……不義なのかしら?」

マリナはそっと手を握る。

「ファティマ様。
 あなたは誰にも愛されず、敬意も払われず、
 閉じ込められていたんです。
 それは“結婚”なんて呼べません。愛じゃありません。」

「……マリナ……」

「それに……デクラン様、ファティマ様のためなら命を投げ出せる男ですよ?ファティマ様のために、こんなところまでやって来たんですよ?惚れない方が無理です!!」

ファティマは真っ赤になる。
ずいぶんと前から
デクランが好きなことは自覚していたが
必死に我慢してきた。
だけど誰かにこの思いを共感してほしくて
マリナに話してみたのだ。
まさかここまで肯定されるとは。

一方のマリナは勢いがついて止まらない。