辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る

そして夜明け。
海は金色に染まり、
船は穏やかに揺れていた。

ファティマが甲板へ上がると、
デクランがロープの点検をしていた。

ファティマの存在に気づいたデクランが、
びくっと肩を跳ねさせる。
明らかに昨日のことを意識してるいるようだ。

「お、おはよう。よく眠れたかい?」
何でもない風に声を掛けるが普段より声が高い。
そして耳も赤い。

ファティマは少し戸惑い、
でも微笑んだ。

「ええ……あなたのおかげで安心して眠れたわ。」

「ぼ、僕の!?いや、僕は別に……!」

手が滑ってロープを落としそうになる。
あわてるデクラン。
それを見てファティマはくすっと笑った。

——かわいい。

ほんの少し昨日より気持ちが軽くなった。

海上の風は強く、
ファティマの髪がほどけて空に舞う。
細い金糸のような髪が、海風に翻った。

デクランは思わず見惚れるが、
慌てて視線をそらし、咳払いする。

「……ちょっと待って。髪……結び直した方がいいよ。」

そう言われてファティマが結い紐を探していると、
デクランが自分の革紐を差し出した。

「これ、使うといい。しっかり結べるから。」

「でも、あなたの物でしょう?借りてしまっていいの?」

「いい。いや、むしろ……その……
君が使ってくれるなら、、嬉しい。」

(言っちゃった!?)
デクランは自分の言葉に内心パニック。
つられてファティマも頬を熱くする。