冷たい風の中、
ひとつのブランケットを肩にかけ合う2人。
沈黙が心地よく、でもどこか甘い。
船体がゆっくり傾き、
自然と二人の距離が近づく。
ふと、ファティマが振り向く。
同時にデクランも視線を向けた。
──息が触れ合いそうなほど、顔が近い。
星明かりがファティマの瞳に映り、
その美しさにデクランは息を呑む。
彼の手が、そっと彼女の頬に伸びる。
触れたい。
触れてはいけない。
その狭間で揺れる、ぎりぎりの距離。
ファティマのまつげが震える。
もうひと言あれば、
触れてしまいそうだった。
……その瞬間。
(待って。私……まだ、人妻だわ。)
罪悪感でもなく、
欲望を拒むためでもなく——
ただ気高い淑女としての誇りが、
ファティマの胸の奥で静かに声を上げた。
彼女はそっと、
けれど確かに身体を引いた。
「……ごめんなさい。」
ファティマの声は震えていて、
それでもとても誠実だった。
デクランは一瞬、
彼女が拒絶したのだと思い、
耳まで真っ赤にして慌てふためく。
「い、いやっ……!謝らないで。
僕が……その、近づきすぎたんだ。レディに対してとんだ無礼を……!」
「ううん、違うの。あなたに触れられることは嫌じゃない。むしろ……嬉しい。でも私……まだ、正式にはドノヴァン侯の妻なの。あなたにこんな思いを抱くなんて、許されないはずなのに……。」
恥じらいと誇りが混ざった声。
ファティマの美しさに、
デクランは胸を打たれた。
ひとつのブランケットを肩にかけ合う2人。
沈黙が心地よく、でもどこか甘い。
船体がゆっくり傾き、
自然と二人の距離が近づく。
ふと、ファティマが振り向く。
同時にデクランも視線を向けた。
──息が触れ合いそうなほど、顔が近い。
星明かりがファティマの瞳に映り、
その美しさにデクランは息を呑む。
彼の手が、そっと彼女の頬に伸びる。
触れたい。
触れてはいけない。
その狭間で揺れる、ぎりぎりの距離。
ファティマのまつげが震える。
もうひと言あれば、
触れてしまいそうだった。
……その瞬間。
(待って。私……まだ、人妻だわ。)
罪悪感でもなく、
欲望を拒むためでもなく——
ただ気高い淑女としての誇りが、
ファティマの胸の奥で静かに声を上げた。
彼女はそっと、
けれど確かに身体を引いた。
「……ごめんなさい。」
ファティマの声は震えていて、
それでもとても誠実だった。
デクランは一瞬、
彼女が拒絶したのだと思い、
耳まで真っ赤にして慌てふためく。
「い、いやっ……!謝らないで。
僕が……その、近づきすぎたんだ。レディに対してとんだ無礼を……!」
「ううん、違うの。あなたに触れられることは嫌じゃない。むしろ……嬉しい。でも私……まだ、正式にはドノヴァン侯の妻なの。あなたにこんな思いを抱くなんて、許されないはずなのに……。」
恥じらいと誇りが混ざった声。
ファティマの美しさに、
デクランは胸を打たれた。



