「私は我が主からの命令に従ったまで。
『ファティマ殿が逃げ出す可能性がある。彼らの動きを遠巻きにフォローせよ。必要なときのみ、手を貸せ』とね。」
ファティマたちが城を脱出したことを確認したトリスタンは
自らもまた変装し、
王都からケルダまでの街道沿いに点在する
商人たちの情報網を使いながら、
デクラン一行の馬車を影から追っていたという。
検問の存在に気づいた彼は、
彼なりの“大芝居”で状況を切り抜けたというわけだ。
しかし、
和やかな時間も束の間。
トリスタンの部下が慌ただしく駆け込んでくる。
「トリスタン様!
ドラゴニア帝国の部隊が北門に接近しています!
この港にもまもなく到達します!」
デクランの心臓が跳ねる。
ファティマも思わずデクランの腕を掴んだ。
トリスタンは部下に鋭く指示を飛ばす。
「包囲網が完成する前に皇女殿下を出港させろ!
海上なら追手は限られる!」
そしてデクランへ。
「ここから先は、あなたの船とあなたの覚悟次第です。
我々は少しでも時間を稼ぎます。アルドレインで――オルランド国王がお待ちです。」
そして最後に、
トリスタンはファティマへ視線を向ける。
「どうか、ご武運を。
あなたを守る者は、決して一人ではありません。」
ファティマが別れの言葉を言おうとしたその時、
ジョサイアが叫ぶ。
「全員乗れ!もう時間がねぇ!!帆を上げるぞォッ!!」
船がきしみながら動き出す。
向こうからは、
確かに黒い影――帝国の追手が迫っているようだ。
岸に残るトリスタンは
片手を挙げて微笑んだ。
「行け!
ファティマ様を――自由へ。」
ファティマは涙をにじませながら
その姿を見つめ続けた。
船はみるみる霧の彼方へ消え、
ついに――安全圏へ。
『ファティマ殿が逃げ出す可能性がある。彼らの動きを遠巻きにフォローせよ。必要なときのみ、手を貸せ』とね。」
ファティマたちが城を脱出したことを確認したトリスタンは
自らもまた変装し、
王都からケルダまでの街道沿いに点在する
商人たちの情報網を使いながら、
デクラン一行の馬車を影から追っていたという。
検問の存在に気づいた彼は、
彼なりの“大芝居”で状況を切り抜けたというわけだ。
しかし、
和やかな時間も束の間。
トリスタンの部下が慌ただしく駆け込んでくる。
「トリスタン様!
ドラゴニア帝国の部隊が北門に接近しています!
この港にもまもなく到達します!」
デクランの心臓が跳ねる。
ファティマも思わずデクランの腕を掴んだ。
トリスタンは部下に鋭く指示を飛ばす。
「包囲網が完成する前に皇女殿下を出港させろ!
海上なら追手は限られる!」
そしてデクランへ。
「ここから先は、あなたの船とあなたの覚悟次第です。
我々は少しでも時間を稼ぎます。アルドレインで――オルランド国王がお待ちです。」
そして最後に、
トリスタンはファティマへ視線を向ける。
「どうか、ご武運を。
あなたを守る者は、決して一人ではありません。」
ファティマが別れの言葉を言おうとしたその時、
ジョサイアが叫ぶ。
「全員乗れ!もう時間がねぇ!!帆を上げるぞォッ!!」
船がきしみながら動き出す。
向こうからは、
確かに黒い影――帝国の追手が迫っているようだ。
岸に残るトリスタンは
片手を挙げて微笑んだ。
「行け!
ファティマ様を――自由へ。」
ファティマは涙をにじませながら
その姿を見つめ続けた。
船はみるみる霧の彼方へ消え、
ついに――安全圏へ。



