辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る

馬車が再び動き出すと、
ファティマは小声でデクランに囁いた。

「……今の方、あなたのお知り合いですの?」

「いや、全く」
デクランは苦笑する。

「ビンセント殿下が手配してくれていたのだろうか。誰であろうと彼に救われた。本当に危なかった。」
やはりあの男のことは、カーティスも知らなかったらしい。

「だがこれではっきりした――
どうやら、俺たちの味方は思っていたより多いらしい」
レオナードが豪快に笑う。

馬車はゆっくりと、しかし確実に、
ケルダへ向かって進んでいった。