辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る

真夜中。
王都の外れにある古い石造りの家に、
ファティマとデクランは
ようやく滑り込んだ。

王都のあちこちに
ファティマを探す兵士の姿があり、
何度も何度もルートを変更させられた。

扉が閉まる音を合図に、
緊張の糸が切れる。
薄暗いランプの下で待っていたカーティスが、
デクランの肩を叩く。

「よく戻った! 本当に……成功だな」

デクランは息を荒げつつ、にやりと笑う。

やがてレオナードとマリナも合流し、
隠れ家は小さな歓声と安堵に満ちた。
緊張から解放されたからか、
ファティマは足に走る鋭い痛みを自覚し、
思わず顔をしかめる。

それを見逃さなかったマリナ。
「足を怪我されたのですか……?」
マリナが飛びつくようにファティマの足を抱えた。
「まぁ、裸足でいらっしゃったのですか。すぐに手当てをいたします。」

ファティマはこくりと頷き、治療を受けた。
包帯が巻かれた白い足首は、
今や小さな戦士のようだった。

治療が終わると、
カーティスが簡易地図を広げる。
「さて、次の作戦に移る。時間との戦いなんだ。夜明けと同時にここを出る。
ただし向かうのは北じゃない……東だ」

「東?」
レオナードが眉を上げる。

「そうだ。港町ケルダ。既にジョサイア殿が船を整えて待っている。今回のことでヴァリニア国王が背後にいるのではとクレオールは思ったはずだ。となると、北の国境沿いは確実に警備が厳しくなる。少し遠回りになるが、少しでも安全にアルドレインへ辿り着けるルートはこれしかない」
迷いのないカーティスの確かな声に、
皆の表情が引き締まった。