辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る

侯国の重臣たちと城の会議場で話し合い、
ファティマは手早く現状を整理した。

・税収改善のための商業政策
・農地の再編と民への分配
・港の整備と漁業の管理
・侯国間の交易ルート確保

どれも、元外交官であるファティマには
朝飯前の仕事だった。
書類を広げ、家臣たちに指示を出すたび、
城の空気が少しずつ変わっていった。

「さすが帝国一の才媛と謳われた皇女様です。侯国が生き返るようです」
重臣のひとりが頭を下げる。
ファティマは微かに頷き、
心の奥で小さな喜びを噛みしめた。

侯国の国民も、
次第にファティマの働きぶりを知るようになる。
城下町を歩けば、
商人や漁師たちの口から自然と称賛の声が溢れていた。

「皇女様のおかげで港が活気づいた!」

「城の政務が整い、安心して商売できる」

これらの小さな勝利は、
ファティマの折れかけている心を
なんとか持ち直させてくれた。

このようなファティマの活躍に
ドノヴァン侯本人は焦るどころか、
まったく別の喜びに浸っていた。

「ははは、なんて良い嫁が来たことか!
これで俺は何もしなくても国が回るじゃないか!」
愛人と戯れながら、
ファティマに向かって軽口を叩く。
彼女の目の前で笑い、杯を交わし、
まったく気に留めない態度。

ファティマは唇を噛み、歯を食いしばった。
誇りはズタズタ、心は何度も折れそうになる。

しかし、彼女は諦めなかった。
「私は、侯国を守る。この国の民を守る――
この男のためではない、私自身のために」