辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る

「もう一つ、聞きたいことがありまして……」
ビンセントは少し照れながら言った。

「……姉上が嫁いでからのこと、聞かせてくれませんか?
どんな風に過ごしていたのか……僕、知りたくて」

デクランは驚きながらも、
ゆっくり語り始めた。

「侯国では……やはり、孤独だったみたいです。
でも臣下の者たちに慕われて、皆から頼りにされていました。いつも誰よりもよく働いていて──」

「姉上らしい……!」
ビンセントの目が潤む。

「そして……アズールティアに来てくださった時の彼女は……笑っていました。心から笑っていた。
……僕は、その笑顔を守りたいんです」

その言葉に、
ビンセントはゆっくりとうなずいた。
「……あなたなら、姉上を託せます」

この日、
二人の間に、
しんとした静かな絆が生まれた。

その後も、二人は夜更けまで語り合った。

姉への想いを語る弟。
彼女を愛してしまった青年。

それは、奇妙で、温かい、
心の交差だった。

気づけば、
二人の距離はすっかり近くなっていた。