言葉は柔らかく、
だが刺さるように胸を抉った。
あまりの仕打ちに、
ファティマは初めて声を出して震えた。

“私が、ここで……力を尽くすべき相手は、これ……？”

辺境の侯国で待っていたのは、
尊敬も愛もない、冷酷で傲慢な男の存在。
ファティマの胸は痛みでいっぱいになった。

それでも、彼女は必死に自分を奮い立たせた。
「……いいえ。ここでも、私の役目を果たすだけ」
涙を拭い、肩を揺るめながら、
ファティマは前を向く。
どれほど絶望的でも、
皇女としての誇りを捨てることはできない。

だが、胸の奥に芽生え始めた小さな光――
『温かい家族が欲しい』
それが、後に彼女の運命を大きく変えることになることを、
この時のファティマはまだ知らなかった。