辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る

侯国の冷たさ、孤独、ドノヴァンの無関心――
すべてが、
アズールティアで味わった温もりと比べられ、
ファティマの心を焦がす。

「……こんな場所に、私は留まるべきなのか」
心の奥で問いかける。
誰も自分を大切にしてくれない場所で、
ただ耐え続ける日々――
その現実が、
デクランへの想いをますます強くしていく。

家臣たちは「侯妃様、少し休んでください」と気遣うが、
ファティマは休めない。
自分しかやれる人がいないのだ。
ファティマは必死に気持ちを奮い立たせた。

ファティマの心の支えは
デクランとの文通だ。
交易書類に忍ばせた手紙は、
侯国の孤独の中での唯一の光。

「あなたの声が聞きたい――」
手紙を書きながら、心の奥底でそう呟く。
読み返すたび、
デクランの温かい返事が届くたび、
逃げたい、ここを離れたいという気持ちは、
ますます膨らむ。
日々の業務をこなす自分
――侯妃としての務めを果たす自分――
でも心はアズールティアに、デクランにあるのだ。

「……逃げてもいいのかしら」
胸に秘めた小さな願いが、
静かに育っていく。
侯国での孤独が、
ファティマの心をさらに鋭く刺し、
彼女の中で、
自由と愛を求める想いを強くしていくのだった。