辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る

音楽が軽やかに響き、
二人はゆっくりと踊り始める。
ファティマの手は柔らかく、
デクランの手の温かさに心がほぐれる。
舞うたびに、炎の光が二人を包み込み、
世界が二人だけのものに変わったように感じられる。

ファティマは胸の高鳴りを
感じずにはいられなかった。
晩餐会でのダンスは、
外交の場面で何度も経験してきた。
けれどこんなにドキドキしたのは
今回が初めてだった。
それはきっと、
ダンスの相手がデクランだからだ。

「侯妃様、笑っていますね」
デクランの声に、
ファティマは目を細めて微笑む。
「ええ……こんなにダンスが楽しいのは初めてよ」
その言葉にデクランがふっと微笑み、
ファティマの腰をぐっと力強く引き寄せた。
デクランと身体が密着し、
身体が熱くなるのを感じる。

笑い声、篝火の炎、潮の香り――
すべてが、
二人を幻想的な夜の世界へと誘う。
まるで時間が止まったかのように、
二人の距離は自然と縮まっていった。