しかし、この日の彼女はまだ知らなかった。

海の向こうに――
自分を救う人がいることを。

海風の匂いがする温かい国があることを。

そして、そこで出会うひとりの青年が、
自分に永遠の愛を捧げ、
帝国すら敵に回して守り抜こうとすることを。

すべてはまだ、静かに動き始めたばかりだった。