辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る

そんな二人を遠巻きに眺めながら、
ファティマはそっとデクランの腕をつつく。

「デクラン……もしかして……」

「うん?」

「……ビンセント、恋の予感じゃない? あの子、ルチアにすごく感情的。あの子のあんな姿、初めて見たわ。」

ニコォ……
ファティマは意味深な笑みを浮かべた。

デクランは「あの二人が……?」と困惑していたが、
ファティマにはもう確信めいたものがあった。

(あれは完全に相性が良い……!
ルチアは強い相手ほど気に入るタイプだし……
ビンセントは自分にズバズバ言ってくれる女性なんて初めてでしょうし……)

姉の目は鋭い。

そして延々と続いた口論の末、
ルチアの
「皇帝なら皇帝らしくしなさいよ!!」
の一喝がトドメとなり、

ビンセントは肩を落とし、
「……分かったよ……帰るよ……。
姉上、何かあったらすぐ呼んで……迎えに……」
と言い残して、
泣く泣く船へと乗っていった。

ルチアは勝ち誇ったように鼻を鳴らす。

ファティマは彼女の横顔を見ながら、
胸の奥でそっと呟いた。
「ビンセント……あなたにも、いい人が現れたかもしれないわね……」

その眼差しは優しく、
そしてどこか楽しげだった。