辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る

デクランは続ける。

「無理に急ぐつもりはない。怖かったら言って。
……ただ、僕は君を愛してる。
今日からは、君が望むだけ、君のそばにいたい。」

「デクラン……」

ファティマが名前を呼ぶと、
彼の表情が柔らかくほどけた。
そっと彼女の頬に触れる。
震える指先。

ファティマも同じように手を伸ばし、
彼の胸に触れた。

「……大丈夫。
あなたとなら、怖くないわ。私もあなたがほしい。」

その一言で、
デクランの瞳が深い喜びに揺れた。

「ありがとう……ファティマ。」

彼はゆっくりと彼女を抱き寄せた。
海の音が遠くで響き、
二人の影が月明かりの中、
ひとつに重なる。

触れるだけの、優しい口づけ。
それから──もうひとつ、
深く、心を重ねるようなキス。

ファティマは目を閉じる。
今まで誰にも見せたことのない表情で。

「デクラン……好き。
あなたと生きるって決めて、よかった……」

「僕もだよ。君を守って、君を幸せにする。
これからずっと。」

夜はゆっくりと更けていき、
二人の世界は静かに、やわらかく、
甘く満ちていった。

そしてその夜、
ファティマとデクランは
本当の意味で“夫婦”になった。