辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る

ファティマの胸が跳ねた。
それは今まで感じたどんな感情より鮮烈で、
温かかった。

デクランは、ひと呼吸置いてから言った。
「この国で──僕と一緒に生きてほしい」

まっすぐ。
逃げない目。
普段気弱で遠慮がちな彼からは
想像できないほどの、
力強い告白だった。

ファティマの心が、ふっと揺れる。

でも、同時に胸の奥で
ずっと隠していた不安が顔を出した。
「……私、もう30歳なのよ。
 あなたより年上だし……。
 本当に、私なんかでいいのかしら?」

デクランは迷わず答えた。
「僕は、君じゃなきゃダメなんだ」

キザでもなく、飾りもなく、
ただ真実だけを伝えるような声。
「年齢なんて関係ない。
 君が笑って、怒って、悩んで……
 全部を僕に見せてくれる人が欲しいんだ。
 君となら、何十年だって一緒に歩きたい」

夕日が二人の間を金色に染める。
ファティマの胸に、じんわりと温かさが広がっていく。

──愛されていいのだろうか?
──もう一度、人生を共に歩む相手を選んでも?

そんな迷いが、彼の言葉一つひとつで溶けていく。

「デクラン……」

声が震えた。
涙ではなく、満たされた幸福の震え。