ドノヴァン侯の自滅と、
ドノヴァン侯国の滅亡──
かつて嫁ぎ、
必死に生きようとした国の最後を知った時、
ファティマの胸には、
怒りでも憎しみでもなく、
ただ静かで深い痛みだけが広がった。
もう縁の切れた国のはずなのに。
それでも、
人々の怯えた顔や小さな子供たちの笑顔が、
ふと脳裏をよぎってしまう。
その日、
彼女は海辺のテラスでひとり、
沈む夕日を見つめていた。
オレンジ色の光が、
大きな瞳に揺れている。
「……どうしてこんな気持ちになるのかしら」
呟きは波にさらわれて消える。
そんな彼女の背に、
そっと一枚のショールが掛けられた。
「ファティマ。君が気に病むことじゃないよ」
振り向くと、デクランがいた。
いつもの優しい笑顔。
でも今日は、瞳の奥に決意の火がある。
「君は、あの国で精いっぱい生きた。
傷つきながら、誰よりも誠実に向き合った。
滅んだのは、君のせいじゃない」
ファティマはうつむく。
「でも……。
私が去った後で滅んでしまったと聞くと、
私が見捨てたように思えてしまうの」
デクランは静かに首を振った。
「違う。
君はただ、幸せになる道を選んだだけだ」
そう言って、真っ直ぐにファティマを見つめる。
「そして……その道の先に、僕もいたらいいと思ってる」
ドノヴァン侯国の滅亡──
かつて嫁ぎ、
必死に生きようとした国の最後を知った時、
ファティマの胸には、
怒りでも憎しみでもなく、
ただ静かで深い痛みだけが広がった。
もう縁の切れた国のはずなのに。
それでも、
人々の怯えた顔や小さな子供たちの笑顔が、
ふと脳裏をよぎってしまう。
その日、
彼女は海辺のテラスでひとり、
沈む夕日を見つめていた。
オレンジ色の光が、
大きな瞳に揺れている。
「……どうしてこんな気持ちになるのかしら」
呟きは波にさらわれて消える。
そんな彼女の背に、
そっと一枚のショールが掛けられた。
「ファティマ。君が気に病むことじゃないよ」
振り向くと、デクランがいた。
いつもの優しい笑顔。
でも今日は、瞳の奥に決意の火がある。
「君は、あの国で精いっぱい生きた。
傷つきながら、誰よりも誠実に向き合った。
滅んだのは、君のせいじゃない」
ファティマはうつむく。
「でも……。
私が去った後で滅んでしまったと聞くと、
私が見捨てたように思えてしまうの」
デクランは静かに首を振った。
「違う。
君はただ、幸せになる道を選んだだけだ」
そう言って、真っ直ぐにファティマを見つめる。
「そして……その道の先に、僕もいたらいいと思ってる」



