ドノヴァン侯は苦虫を噛み潰したような顔で
地団駄を踏む。
あの女に一杯食わされたのだ。
愛情なんてひと欠片もなかったが、
あいつの仕事の有能さだけは認めていた。
あいつがいなければ政務が回らない。
いなくなってもらっては困るのだ。
完全に思い通りに行かず、
侯は怒鳴り続けたが、
教会の人間は誰一人取り合わなかった。
大司教の厳しい視線が、
最後の釘を刺す。
「教会は、不正と怠慢に手を貸すつもりはありません。」
むしゃくしゃした気持ちを抱えながら
城に帰ったドノヴァン侯は
近くにいた侍女に怒鳴りつけて
酒を持ってこさせる。
肘掛け椅子に沈み込んだ巨体は
長年の怠慢と不摂生を見事に体現していた。
その時背後から、甲高い声が響いた。
「侯爵様、どうでしたの?」
ねっとりと媚びるような甘ったるい声。
その声を聞いて、
ファティマへの怒りで荒れていたドノヴァン侯も
幾分落ち着き、
にやりと口角をあげる。
上品で慎ましいファティマとは正反対の
派手な化粧、キツすぎる香水。
ゴテゴテと装飾かついたドレスに
ジャラジャラと重ね付けされたアクセサリー。
洗練されたとは言い難い派手な身なりに
身を包んだ愛人。
彼女は貴族の生まれでも何でもなく、
ドノヴァン侯の行きつけの娼館で働いていた
一介の娼婦なのだ。
愛人の大きくなった腹を撫でながら
ドノヴァン侯は考える。
正直、ファティマを呼び戻すことは難しいだろう。
しかしだからといって
自分が政務をやるのはごめんだ。
この女は学があるわけでもないし、
上手く丸め込んで代わりにやらせようか。
「なぁ、愛しいマチルダ。侯妃にならないか?」
ドノヴァン侯は猫撫で声で
マチルダに問いかける。
「あの女狐といると息が詰まるから、捨てることにした、
わしにはマチルダのような可愛いおなごが必要なんだ。」
地団駄を踏む。
あの女に一杯食わされたのだ。
愛情なんてひと欠片もなかったが、
あいつの仕事の有能さだけは認めていた。
あいつがいなければ政務が回らない。
いなくなってもらっては困るのだ。
完全に思い通りに行かず、
侯は怒鳴り続けたが、
教会の人間は誰一人取り合わなかった。
大司教の厳しい視線が、
最後の釘を刺す。
「教会は、不正と怠慢に手を貸すつもりはありません。」
むしゃくしゃした気持ちを抱えながら
城に帰ったドノヴァン侯は
近くにいた侍女に怒鳴りつけて
酒を持ってこさせる。
肘掛け椅子に沈み込んだ巨体は
長年の怠慢と不摂生を見事に体現していた。
その時背後から、甲高い声が響いた。
「侯爵様、どうでしたの?」
ねっとりと媚びるような甘ったるい声。
その声を聞いて、
ファティマへの怒りで荒れていたドノヴァン侯も
幾分落ち着き、
にやりと口角をあげる。
上品で慎ましいファティマとは正反対の
派手な化粧、キツすぎる香水。
ゴテゴテと装飾かついたドレスに
ジャラジャラと重ね付けされたアクセサリー。
洗練されたとは言い難い派手な身なりに
身を包んだ愛人。
彼女は貴族の生まれでも何でもなく、
ドノヴァン侯の行きつけの娼館で働いていた
一介の娼婦なのだ。
愛人の大きくなった腹を撫でながら
ドノヴァン侯は考える。
正直、ファティマを呼び戻すことは難しいだろう。
しかしだからといって
自分が政務をやるのはごめんだ。
この女は学があるわけでもないし、
上手く丸め込んで代わりにやらせようか。
「なぁ、愛しいマチルダ。侯妃にならないか?」
ドノヴァン侯は猫撫で声で
マチルダに問いかける。
「あの女狐といると息が詰まるから、捨てることにした、
わしにはマチルダのような可愛いおなごが必要なんだ。」



