辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る

港町での散歩デートを終えて、
手をつないだまま王宮へ戻ってきた二人。
ファティマは頬を赤らめ、
デクランは少し浮かれていて
――まさに恋人そのものだ。

扉を開けた瞬間。
4人の姉たちが一斉にこちらを見ている。
「「「「ただいまの二人を出迎える準備は万端!」」」」


アリアンヌ、ベリル、セレナ、ルチアが
完璧に整列して待ち構えていた。

全員が満面の笑み。
二人に逃げ道はなかった。

「お帰りなさい、あなたたち。
散歩……ずいぶん楽しそうだったんですって?」
やはり先陣を切るのは
長姉アリアンヌである。

「市場での恋人宣言、聞いたよ?“僕の大切な人”って!!」
デクランは顔を赤くして叫ぶ。
「や、やめてくれ。ベリル姉さん……!」

「まぁまぁ、照れないの。
ファティマさん、本当に幸せそう。……どこまで二人の仲は深まっているのかしら?進展具合を聞かせてもらえる?」

「し、進展……!?」
ファティマも思わず狼狽える。

「ねぇファティマさん、うちの弟って不器用でしょ?
ちゃんとリードしてる?」

「ちょっと、ルチア姉さん!!?」

「あ、あの、えっと……」
外交においては敵なしのファティマも
この様な質問攻めには上手く対処できなかった。