辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る

「「「おおおおおおおおおおお!!!」」」

市場がどよめき、拍手が起き、
おばちゃん達が一斉に黄色い声を上げる。
『大将、余計なことを・・・』と思いつつ、
やはり可愛いデクラン王子のことが気になって
みんな聞き耳を立てていたのだ。

「待ってたよこの瞬間〜〜!!」
「やっと言ったね王子!!」
「ファティマちゃん可愛いよぉ!!」
「生魚より新鮮だわこの恋!!!」

市場中から次々に祝福され、
ファティマは耳まで真っ赤になり、
胸に手を当てて一生懸命落ち着こうとする。
しかし、顔のゆるみは止まらない。

デクランはそんな彼女を見て、
さらに柔らかい笑みを浮かべる。
「恥ずかしかったらごめん。でも……
 隠す理由なんて、もう何もないから。」

「……ううん。うれしい。すごく……」

彼女はそっとデクランの肩に身を寄せた。

市場の喧騒が、
どこか祝福の音楽のように聞こえる。


「じゃあ……午後は、港を見に行こうか。
 君が好きそうな場所がある。」

「ええ。あなたと一緒なら、どこへでも。」

──アズールティアの朝は、
誰よりも幸せそうな恋人たちの笑顔で輝いていた。