辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る

小道を抜けると、小さな噴水の前へ。
水面が光を散らし、静かで暖かい空間。

ファティマがそっと横を向くと、
デクランも同時に彼女を見ていた。
目と目が合うと、
空気がひりつくように甘くなる。

互いに言葉もなく、ただ近づく。
指先だけでなく、
心の距離まで溶けていくように。

デクランはそっとファティマの頬に触れた。
彼の指が触れるたび、
ファティマの心臓が跳ねる。

「……本当に……あなたがここにいるなんて。夢みたいだ。」

「えぇ。私、あなたのところへ帰ってきたの。」

デクランの喉が上下し、
ゆっくりとファティマへと顔を寄せる。

鼻先が触れ、
二人の呼吸が混ざる。

あと少し、あとほんの少し……

ファティマは目を閉じ、
デクランも吸い寄せられるように――

――そして。

彼らの唇はやわらかく、
しっとりとファティマの唇を押し包むように
確かに触れた。

触れた瞬間に涙が零れそうになるほど優しくて、
長い旅路の終わりと始まりを告げるようなキス。

デクランの手が震えていた。
ファティマはその震えさえ愛しくて、
そっと手を重ねた。

キスが終わっても、
二人はしばらく離れられなかった。
お互いの額をつけたまま、
静かに息を整える。

「……ファティマ。」
「デクラン……もっと、もっと呼んで。」

デクランは小さく笑い、
ファティマをそっと抱き寄せる。

「ファティマ。……愛してる。ずっと言いたかったんだ。」

彼女はデクランの胸に顔を埋め、
涙を浮かべて微笑んだ。
「私もよ、デクラン。」