辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る

ファティマの頬の腫れも引き、
まだ本調子ではないまでも
外の空気を吸えるようになったある朝。

デクランは控えめに扉をノックした。
「……散歩、どうかな?気分転換になると思って。」

柔らかな声にファティマは微笑んだ。
彼の優しさに触れるだけで
胸が熱くなる。

王宮の庭は春の光に満ち、
海から運ばれる風が花の香りを連れてくる。
ゆっくり歩き始めてすぐ、
自然とファティマの指が
デクランの手の甲に触れた。

その瞬間、
デクランがわずかに息を呑む。

ファティマはその反応にくすりと笑い、
頬を僅かに染めながら
今度は確かに彼の手を握った。

「……い、良いの?」
「良いに決まってるでしょう。だって私はもう誰の妻でもないのよ。」

ファティマはにっこり笑って、
彼の指に自分の指を絡めた。
デクランは赤くなりながらも、
ぎゅっと握り返す。

手を繋いで歩くだけで胸が弾む。
二人の影が寄り添うように伸びていく。