デクランは一言も語らなかった。
今回の旅で起こったことも、
ファティマの決断も、
彼女の涙も。
ただ、淡々と、
これまでと同じように
日々の仕事に戻っただけ。
・港の検分
・商隊との契約書確認
・航路の整備
・船の点検
・兵の訓練視察
いつも通り。
とても“失恋に近い痛み”を抱えている男には見えなかった。
だけど、
レオナードも、カーティスも、マリナも気づいていた。
――デクランは、
何も言わないことで全部を守っている。
ファティマも、自分も、
そして未来も。
日没後、王宮が静けさに包まれる頃。
デクランは決まって同じ場所に現れた。
北東の空が見える、
小高い丘の上の見晴らし台。
彼がいつも眺めているのは、
決まってドノヴァン侯国の方角だった。
風が吹く。
波の音がわずかに届く。
デクランはひとり、
ただ黙ってその方向を見つめる。
―彼女がきっと、今あの国の空の下で闘っている。
―あの人なら、必ず自分の運命を切り開く。
そう信じているからこそ、
彼女の決断を無碍にして
追いかけることはできなかった。
「ファティマが、自分の足で戻る場所を選んでくれるまで……僕はただ、ここで待つんだ。」
彼の横顔は穏やかで、
でもどこか切なかった。
今回の旅で起こったことも、
ファティマの決断も、
彼女の涙も。
ただ、淡々と、
これまでと同じように
日々の仕事に戻っただけ。
・港の検分
・商隊との契約書確認
・航路の整備
・船の点検
・兵の訓練視察
いつも通り。
とても“失恋に近い痛み”を抱えている男には見えなかった。
だけど、
レオナードも、カーティスも、マリナも気づいていた。
――デクランは、
何も言わないことで全部を守っている。
ファティマも、自分も、
そして未来も。
日没後、王宮が静けさに包まれる頃。
デクランは決まって同じ場所に現れた。
北東の空が見える、
小高い丘の上の見晴らし台。
彼がいつも眺めているのは、
決まってドノヴァン侯国の方角だった。
風が吹く。
波の音がわずかに届く。
デクランはひとり、
ただ黙ってその方向を見つめる。
―彼女がきっと、今あの国の空の下で闘っている。
―あの人なら、必ず自分の運命を切り開く。
そう信じているからこそ、
彼女の決断を無碍にして
追いかけることはできなかった。
「ファティマが、自分の足で戻る場所を選んでくれるまで……僕はただ、ここで待つんだ。」
彼の横顔は穏やかで、
でもどこか切なかった。



