辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る

エドリックに静かに別れを告げ、
「自分の未来は自分で決着をつける」と
決意を固めたファティマ。

やはり一度、
ドノヴァン侯国に帰らなければならない。
あの男との縁を断ち切らなければ。
全てはそこからだ。

エドリックにも改めて自分の決意を語る。
彼は無言で頷き、
ファティマの決意を支持してくれた。

そしてその報せは、
すぐにデクランの耳にも届いた。

「ドノヴァン侯国に……帰る?」
彼は最初こそ信じられない
というように固まっていたが、
次の瞬間、
張り詰めていた感情が
堰を切ったように溢れた。

「正気じゃない!!」
普段は穏やかで理性的な彼が、
机を叩いて立ち上がる。

「何のために僕が命がけであなたを救ったと思っているんだ。あんな……あんな男のところに戻るなんて、許せない!」

普段の彼からは想像もつかない
剥き出しの怒りと焦り。
声が震えていて、必死なのが分かる。

そしてデクランにつられるように
ファティマも感情を抑えきれなくなる。

「行きたいわけないでしょう!!」
彼女の声も震えていた。

「できることなら……ずっとここで過ごしたい。
みんなと。
ーーあなたと。」

その一言でデクランの表情が揺らぐ。

でも、彼女は続ける。
「けれどあの人と向き合わなければ、私は前に進めない。
夫と絶縁する。それは私にしかできないことなの。」

そして、もうひと押し。
彼に“気持ち”を求めるように。

「ねぇデクラン。
少しでも……私を想ってくれているなら、
私の気持ちを分かってよ。」