最近のファティマは
激務での疲れが顔に現れ、
肌の色も冴えない。
そんな彼女の姿に、
デクランは心を痛めていた。

「侯妃様、あまり無理をなさらないでください……」
いつもの穏やかな笑顔の奥に、
真剣な思いが宿っていく。

とある夕方、
デクランから一通の文書が届いた。

――親善を兼ねたアズールティアの収穫祭へのご招待。侯妃様のご出席を心よりお待ちしております――

ファティマの胸は、
久しぶりに浮き立つ。
侯国の孤独な日々、
冷たく突き放す夫の存在を思い出す。
デクランからの文面をなぞるたび、
心の奥でくすぶっていた希望の火が
鮮やかに灯るようだった。

「……行きたい」
小さな微笑みと共に、決意を胸に抱く。
ドノヴァンが何と言おうが、
絶対に行く。

だが、
ドノヴァン侯は全く関心がなく、
「勝手にしろ」と一言残し、
酒に戻っていった。
その冷たさに、
ファティマの心は軽く痛んだが、
もう気にすることはなかった。

デクランの国に行けるのだから。