辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る

エドリックは地図を広げ、
ファティマに示した。

「あなたが望めば、我々は“新しい身分”を与える。
 ヴァリニア王家の客人、そして“保護対象”として扱う。」

「保護……対象……?」

「ドラゴニアが君を奪い返す理由を潰すためだ。
 君が“ヴァリニアから庇護を受けている”形にすれば、
 クレオールも手が出しにくいだろう。」

ファティマは息を呑む。
「私は……そんな大層な扱いを受けてよいのでしょうか……?」

エドリックは笑った。
「私とエレオノールにとって、
 君は友であり、
 同盟者であり——
 そして、この国の“客人”だ。何も遠慮はいらない。
 それに——」

エドリックが意味深に続けた。
「あなたが“何を大切にしたいか”は、
 もう答えが出ているように見えるが?」

「……え……?」

「デクラン・アズールティア。あの男の目を見れば分かる。彼は本気で君の未来を案じている。」

ファティマの心臓が跳ねた。
「ち、違います! 彼は私を救おうと——」

「恋に気づけないのは当人ばかりだ。私にもかつて心当たりがある」
エドリックが楽しそうに笑う。

「ファティマ殿、あなたを守る者は多い。
 だが、“人生を共にする相手”は……」

彼はふっと視線を落とした。
「あなた自身が選ぶものだ。」

ファティマは返す言葉を失い、
静かに頭を垂れた。

しかしその胸には、
確かな光が一つ、灯っていた。