辺境に嫁いだ皇女は、海で真の愛を知る

エドリックは少しの間、
彼女を見つめたあと、
そっとファティマの手を取った。

「ファティマ殿。
 あなたは“国のため”に生きる必要はない。」

静かだけれど、強い声。

「あなたはもう十分に尽くした。
 若くして外交の最前線に立ち、
 帝国の腐敗から国を守り、
 そして今……命を賭けて自由を掴んだ。」

「……陛下……」

エドリックは続けた。

「ドノヴァン侯国はあなたの帰還を望むだろう。
 しかし、あなたが戻れば、クレオールは必ず奪い返しに来る。政略の駒として、再び利用される可能性は高い。」

そう言い切る国王の顔は、
友としての真剣さに満ちていた。

「私はね、ファティマ殿。
 あなたには“人間らしい幸せ”を選んでほしい。」

ファティマの喉が震えた。
「幸せ……?」

「そう。
 ここヴァリニアでも、アルドレインでもいい。
 あなたが安心して暮らせる場所を、私たちは用意する。
 “自分のために生きる”という選択肢を、持っていいんだ。」

その言葉に涙が溢れそうになり、
ファティマは慌てて瞬きをした。