「兄、白宮征一郎の目的はこの世界を征服することかもしれません……」
「ええ、そうかもしれませんね」
「そうかも、って⁉ 知ってたんですか?」
「まあ本人が、たまにつぶやいてますから……」
えーと、「世界中の人間を我の下僕にするのが夢だ」とか「下僕が10億人超えたら番号で呼ぶのも大変そうだな……『わ300』とか最初に付けた方が良いかもしれぬ」と世界に目を向けていそうな発言をたびたびしている。
「そんなことして兄はいったい何をするつもりですか?」
「詳しくはわからないですけど、たぶん大丈夫です」
鳴雄サマは自己愛が強いけど、自分を慕う人間の笑顔を守るひと。
初めて会った時に不良から助けてくれたし、姉の瀬十花や親友雛子もそう。仔猫だって助けるし、街の人みんなを笑顔にしてくれる。誰よりも優しい活動で、こんなことで世界を席巻するなら悪い話ではないと思う。
だからあまり深く考えないようにしてる。
鳴雄サマの正体が、旧財閥の御曹司でも、宇宙人でもなんだっていい。
今の鳴雄サマが私、美柑にはかけがえのない存在。
鳴雄サマの存在を感じる今の距離感が、とてもありがたいし、人生の中でも、とても濃厚で甘い時間だと感じる。
そのせいか、今の距離感と時間を失うのは、とても怖いし、考えるのもイヤ。
先週は弟君ひとりだったけど、大人が介入してきたら、一瞬で「今」が壊れてしまいそうで、想像するだけでカラダから力が抜けてしまう感覚に何度も捉われている。



