困ったな―。
あっ、いた。
ファミレスを出て、すぐに発見した。
「あははっ、デブだから、アゴのところがタプタプできる!」
「はははっ、愉快そうで何よりだ。誰かの弟よ」
場所は、ファミレス近くの訳有商店街。
その一角で、黒い巨大なおデブな猫、鳴雄サマいわく下僕333号。ちょっと前に新たな下僕として加わったらしく鳴雄サマにヨシヨシされるのが好きらしい。ちなみに猫社会では、舐める方が格上なので、おデブな黒猫が鳴雄サマを慕っている証拠でもある。
猫を使って弟君のご機嫌を取るなんてさすが鳴雄サマ。
「鳴雄サマ!」
「ふむ、下僕8号。いいところに来た」
「何しているんですか?」
「誰かの弟を頼んだ⁉」
「あっ、ちょっと鳴雄サマ?」
手招きされたので、鳴雄サマたちに駆け寄ると、座ってデブ猫と戯れていた鳴雄サマが座った状態から背を向け、商店街通りの中をもの凄い勢いで走り去っていった。
「伊予さん」
「えっ? あ、はい」
機嫌がよくなった弟君はデブ猫の頭を最後に撫でたあと立ち上がり、美柑の方を見た。
「今週はこれくらいでお開きにしましょう? 来週末また来ますから」
「いいんですか。鳴雄サマのこと」
「ええっ、記憶障害があるようですね……たぶん一筋縄ではいかないでしょう」
住んでいる場所や通っている高校も特定できたので、今日連れ帰るのはあきらめたそうだ。だけど、来週、また来るので連絡先を交換することにした。
「そうだ。ひとつ、気づいたことを教えましょう」
商店街の入り口で拾ったタクシーに乗り込む前に白宮宗志……弟君が美柑の方を振り返った。
「兄、白宮征一郎の目的は、この世界を征服することかもしれません……」



