「わーはっはっはっ――男の子はこんなことで簡単に泣くものじゃ……」
「エっ……エっ……」
「しょうがない。我の奢りだ。好きなものを……」
「エッ……エッ……ひぐっ……!」
「ならばやむ得ない――我の必殺百変顔を……」
「ひぐっ、ひゃぁぁぁん!」
全然泣き止む気配がない。
周囲の客もこちらの様子に気づいて「いつもボランティアしてる子じゃない? 子ども泣かしてるの?」などとヒソヒソと囁き出して、初めて鳴雄サマが大粒の汗を流して困っているところを見た。
「下僕66号よ」
「ハッ⁉ お呼びですか? ボス」
片目眼帯で目つきが悪いというか血色の悪い女性店員がスッと現れた。
たまに左右逆になっているので、目を怪我しているとかではなく、いわば思春期特有の病に冒されている。他にも肘や手首など包帯が巻かれていて、かなり症状が重いことが窺える。ちなみに美柑と歳が近そうだが、この街ではこのファミレス内でしか見かけたことがない。
「釣りは今度回収する。預かっておくのだ」
「イエッサー⁉」
「よし、誰かの弟。行くぞ!」
鳴雄サマに敬礼する眼帯少女。
弟君を脇に抱えて、ファミレスから逃げるように出て行った鳴雄サマを追いかけようと、支払いを済ませようとしたら……。
「フフフッ、どうやら私の勝ちね……」
と、なにやら勝利宣言された。



