「ごめん、やっぱ何でもない」 掴んでいた鳴雄の袖を放す。 ちょっとふざけただけ。 ――いや違うな。 履(は)き慣れない草履で足が痛かったから待ってほしかった? それとも心の中にある気持ち(ホンネ)を素直に伝えてみる? どれもこの場を丸く収める方法とはなりそうもない。 「よくわからんが、一緒に来るのだ」 「えっ――ちょっ」 私の片手を取ってグイッと引かれた。 立ち止まって打ち上げ花火を見上げる人々の合間をどんどんすり抜けていく。